本年4月10日夜のテレビ記者会見で秦先生の解説場面をご覧になった方もおられると思います。
この会見は「世界初ブラックホール撮影成功 国立天文台などのチームが会見」というものでした。
会見では、オレンジ色のドーナツのような映像が示され、その真ん中の黒い穴の中心にブラック
ホールがある、ということでした。この黒い穴が見えるのは、ブラックホールがその周囲にある
光を吸い込んでしまうからで、この黒い影を「ブラックホールシャドウ」と呼びます。
このブラックホールは、おとめ座のM87銀河の中心にあり、大きさはこのブラックホールシャドウ
の半分くらい、また質量は太陽の65億倍、ということもわかりました。
この観測は、世界各地の電波望遠鏡を結んだ国際共同観測で行われ、「EHTプロジェクト」と呼
ばれますが、秦先生は日本の研究グループの中心として活躍してこられました。今回秦先生に、
このプロジェクトとその観測成果の詳細をお話しいただく予定です。
なお秦先生にはまた、2015年の駿台北軽井沢天文講座でも解説していただいております。
2019年は、元号の改定もあってカレンダー業界にはいろいろな話題がありました。またカレンダーは「暦(こよみ)」との関係で天文学にも深い関わりがあります。実際カレンダーは、天文台が計算に基づいて春分・秋分の日を発表するまでは休日掲載の関係もあって発行ができない、ということになっています。
このようなカレンダーにまつわるいろいろな話題を、カレンダー出版の仕事に携わっておられる
小澤 潤先生にお話しいただきます。小澤先生は、日本カレンダー暦文化振興協会で事務局長を
しておられます。
「人類の宇宙観の歴史」については、放送大学の講義に基づいて出版された『宇宙観5000年史 ―人類は宇宙をどうみてきたか』(中村 士, 岡村 定矩 著、東大出版会)、あるいは 『人は宇宙を
どのように考えてきたか ― 神話から加速膨張宇宙にいたる宇宙論の物語』(Helge G. Kragh,
竹内 努 他訳、共立出版)などの好著があります。これを見ると、人類はいかにして現在の
「138億年のビッグバン宇宙論」に到達したかがわかると同時にまた、紀元前のギリシャなどで
いかに高度な宇宙論があったか、ということもわかり、宇宙論の発展の歴史の複雑さも印象づけ
られます。
本講座では、これらをどのように理解したらよいかということについて、かなり強引な考察
を試みたいと思います。すなわちまず、歴史の流れをかなり単純化したパターンで記述し、
その流れの特徴を描き出すことを試みます。
例えば、「宇宙の始まり」という考えは、すでに古代民族に色々見られる「天地創造」の
考えに始まるわけですが、同じような考えでも現代の「宇宙の始まり理論」は、それらと
大きな違いがあります。そしてこの違いをもたらしたのは、各種の科学・技術的宇宙観測
の発展です。パターン化の一つとして、「科学技術の発展と宇宙観の変遷」という視点が
考えられるわけです。
8月の講座に続き、「どのように理解するか」という面を追及してみたいと思います。
井田 茂先生は東京工業大学で、宇宙・地球・生命の起源を研究する研究室を主宰され、
また同大学の研究拠点組織としての「地球生命研究所」(略称 ELSI)の副所長をして
おられます。講座では、太陽系外惑星探査や地球外生命探査の研究最前線についてお話し
いただく予定です。以下に、先生の研究室ホームページからの引用を掲示します:
宇宙・地球・生命の起源
夜空を見上げると光り輝く星々に圧倒されますが、宇宙には数多くの惑星が存在することが
わかってきました。 しかし、惑星がどのように生まれ、どのように進化するのかなどはあまり
わかっておらず、多くの謎に満ちている分野でもあります。
惑星科学理論構築に向けて
我々は、原始惑星系円盤・惑星系形成過程・内部構造進化など様々な角度から、 N体シミュ
レーションや流体シミュレーションを始めとした数値シミュレーションを軸に、 解析的手法・
系外惑星観測を加えた様々なアプローチ方法でこれらの謎の解決に取り組んでいます。