2023年11月18日 第692回 月例天文講座  

M87ブラックホールの降着円盤と
  ジェットの撮影

イベント・ホライズン・テレスコープ メンバー
   田崎 文得

           (右図はクリックで拡大します)

    右上図は、波長3.5mm帯の国際電波望遠鏡ネットワークによって得られたM87中心部の電波画像。
    中心部のリング状構造が巨大ブラックホールを取り巻く降着円盤で、そこにつながるジェットの様子
    も捉えられています。(画像クレジット:Lu et al. 2023; composition by F. Tazaki、
     webでの出典は国立天文台ニュースページ


 これまで2つの巨大ブラックホールの姿が、イベント・ホライズン・テレスコープ (EHT) によって撮影されました。これらのブラックホールはそれぞれ楕円銀河M87と天の川銀河 (銀河系) の中心にあり、質量は太陽の65億倍と400万倍にも及びます。ブラックホールの強い重力により光が曲げられている証拠である「光子リング」の直径は、それぞれ900億kmと6000万kmであること、太陽からブラックホールまでの距離は5500万光年と2万6千光年なので、EHTによって1億分の1度もの小さな構造を撮影することができたということになります。人間の視力の指標に換算すると、およそ300万もの視力に相当します。

 EHTが観測する電波の波長は1.3mmですが、3.5mmの電波を地球規模の望遠鏡ネットワークで捉えることができるのがグローバルミリ波VLBI観測網 (GMVA) です。GMVAの視力はおよそ150万に相当します。GMVAは2018年4月にアルマ望遠鏡やグリーンランド望遠鏡と協力して、M87の中心部を観測しました。その結果ブラックホールに吸い込まれるガスで作られる降着円盤とジェットを同時に撮影することに成功しました。16台の望遠鏡が協力することで、高感度・広視野で撮影できたことがこの成果につながりました。本講演では、GMVAでの撮影について、画像化について、そして得られた画像からどんなことがわかるのかをお話しします。



参考資料 (中嶋記)
田崎先生ホームページ
天文月報、関連記事(2019年7月号)
* EHT と GMVA の解説、アルマ望遠鏡のページ、 その1その2
* 駿台天文講座、2019年12月、秦和弘先生の EHT 観測のお話