ジャスミン計画と天の川銀河 -- 国立天文台,郷田 直輝

1.ジャスミン(JASMINE)計画について

国立天文台JASMINE検討室を中心として、JAXAや京都大学等の協力のもと、赤外線位置
天文観測衛星であるジャスミン(JASMINE)計画が進められている。
計画では、超小型衛星、小型科学衛星、中型科学衛星を順番に打ち上げて観測能力を上
げながら科学的成果をあげていく予定である。これらの計画を「JASMINE計画シリーズ」
と呼んでいる。なお、段階的に行うのは、位置天文観測は観測装置や衛星システムに対し
て非常に厳しい技術的要求を課すため、技術的蓄積を積みながら技術的実現性を順次高め、
より大きな科学的成果の達成を目指すためである。

2.位置天文観測について

本講演では、先ず、位置天文学とは何か、またその重要性について説明する。位置天文学
とは、天球上での星の位置とその動きをより正確に測定しようという天文学の(最も古く
からある)一分野である。天球の上の位置から星の方向が分かる。さらに、その動きから
星までの距離と星の(接線)速度までもが分かる。これらの星の情報は、天文学の様々な
分野の研究で必要かつ重要な基本情報となる。さらに、位置天文観測の歴史と現状について
も概説する。
 
3.ナノ・ジャスミン(Nano-JASMINE)計画について

次に、まもなく打ち上げる予定の超小型衛星であるナノ・ジャスミン計画について説明を
行う。この計画は、国立天文台、東京大学、京都大学を中心として開発を進めている。主鏡
口径5cm、重さ35kg、サイズ50cm立方程度の超小型衛星とよばれる種類の衛星である.ウク
ライナのサイクロン−4ロケットに搭載され、ブプラジルのアルカンタラ発射場から2012年
に打ち上げられる予定である。日本で初めての位置天文観測衛星であり、(世界初の位置
天文観測衛星である、ヨーロッパが過去に打ち上げたヒッパルコス衛星に続く)世界でも
2番目の位置天文観測衛星となる。超小型衛星とはいえ、検出器の技術革新などにより、単独
ではヒッパルコス衛星と同程度の観測精度(3ミリ秒角)の達成を目標とし、ヒッパルコス
よる恒星の位置カタログと組み合わせることにより、これまでより一桁精度の高い運動情報
を含む位置天文カタログが作成できる。これにより、太陽系近傍の天の川銀河の研究進展が
期待されている。
 
4.ジャスミン(JASMINE)計画シリーズによる天の川銀河の謎解き

ナノ・ジャスミンに続き、2017年度頃の打ち上げを目標とする小型ジャスミン計画、さらに
2020年代の打ち上げを目標とする(中型)ジャスミン計画を進めている。小型JASMINEでは、
望遠鏡の主鏡口径は,30cmクラス、中型JASMINEでは、80cmクラスとなる。近赤外線とよばれ
る赤い波長の光を用いて、天の川銀河の中心付近や中心をとりまくバルジ構造と呼ばれる領域
を中心に観測する。位置天文精度は、ナノ・ジャスミンより2桁も精度が高い10マイクロ秒角
を目指す。これによって,バルジの星の初めての直接的な高精度距離測定と接線速度測定を
行う。
さらに本講演では、なぜ、ジャスミンによって天の川銀河を観測するのか、その意義、重要性
について説明を行う。天の川銀河の構造や形成史を知ることが銀河形成や宇宙論にとっても
重要であり、天の川銀河の解明は、宇宙における構造形成の解明、さらに究極的には私たち
人類の位置づけの解明にもつながるものとなることを概説する。