第555回 太陽観測衛星「ひので」と金星の太陽面通過

  JAXA, 宇宙科学研究所,坂尾太郎 先生   (講演概略, 中嶋まとめ)

*本日の話の概要

・太陽とその活動 ・「ひので」の紹介 ・金星の太陽面通過 ・まとめ

*太陽とその活動

・太陽黒点  黒点を最初に観測したのはガリレオだった.(下図1)  ガリレオは連続スケッチ観測をしていたので,太陽自転も把握していたと   考えられる. ・太陽のいろいろな画像  下図2の左上から,光球(可視光),光球(磁場分布),彩層,コロナ  → これらは,見る光の種類の違いでこのように見える. ・太陽大気の構造  高度と温度分布,密度分布(下図3)  → 彩層からコロナに移る所で温度が数百万度に急上昇する.    コロナの100万度以上の層はX線で見える. ・太陽からの電磁波放射のグラフ(下図4)  紫外ー赤外の範囲は 6000Kの黒体放射になっている.  X線の出方は,静穏時と爆発時で大きく変わる. ・太陽コロナの不思議な世界  磁石の磁力線の図,X線で見たループの磁力線の図(上図5)  磁場と黒点の動画(ひのでホームページより) ・コロナ中のいろいろな活動現象(上図6)  太陽フレア,コロナの質量放出の動画その2(SOHOのページより)  地球への影響もある. → オーロラ,   送電線に過電流が発生し変電所への影響があった. ・太陽の謎 ー 次のようなことが大きな謎となっている:  コロナ中でどうしてフレアなどの活動現象が起きるのか?   ー 太陽表面の磁場との関係は?  コロナはなぜ高温(100万度以上)なのか?  コロナ中の活動現象は地球のまわりにどう影響を与えるか?(宇宙天気)  太陽の活動周期(11年)はなぜ存在するのか? ・地球大気による電磁波の吸収(上図7)  X線,紫外線は上空でブロックされる.  → これらは宇宙空間から観測する必要.  地表で見える光であっても,高分解能観測や(天候,昼夜に左右されない)   連続観測のために,宇宙空間からの観測が必要.  ・飛翔体による太陽観測の歴史  ひのとり(1981-1991),ようこう(1991-2005),ひので(2006- )

*「ひので」の紹介(上図8)

・3つの望遠鏡がある:  1) 可視光磁場望遠鏡 (SOT)  2) 極端紫外線撮像分光装置 (EIS)  3) X線望遠鏡 (XRT)  日,米,英の研究機関が協力 ・打ち上げの映像(下図9-11)  2006年9月23日, M-V-7 ロケット, 鹿児島県内之浦より. ・プロミネンスの動画(下図12)  → コロナ内を磁力線の波動が伝わってゆく.  #ひのでホームページでの解説(動画あり) ・スピキュール(太陽表面に見える針のような構造)の動画(上図13, 動画は略)  → この波動で,コロナを加熱できるのではないか. ・Pricise Measurement of Polar Magnetic Field(上図14)  衛星搭載の望遠鏡は,空間分解能が高いので,斜めにしか見られない太陽の「極領域」も   良い精度で観測可能.  → 北極点のS磁石の分布の図(塩田大幸,下記報告より)  #報告論文 (pdf)  → 太陽の北極側では,2008年はS極(青)ばかりだったが2011年にはN極(赤)も見えてきた.    → 我々は,太陽磁場の反転を目撃中なのかもしれない. ・太陽全体の磁力線構造の図(上図15,16)  → 2重極から4重極構造へと変化しつつある.    → 地球への影響が心配. ・黒点が形成される動画(数日の連続撮影)(下図17, 動画は略)  

*SOTによる金星の太陽面通過

 金星の大気の層がはっきりわかる  動画(国立天文台,ひのでのページ) ・「ひので」から見える金星の軌跡予報  衛星が地球の周りを回るため,軌跡が波打っている.   (上記動画と同じ,国立天文台,ひのでのページより)    ・観測ポインティング計画の策定(上図18)  アメリカ,イギリス,ノルウェーを結んで電話会議を行い,観測計画を決める.  策定朝会風景(上図19) ・ひので,データ受信局の分布図(上図20)  世界中にたくさんの受信局があるので,スピーディーにダウンリンクできる.     早いときは当日の夕方に公開できた. ・X線による金星通過観測動画  動画(国立天文台,ひのでのページ)

*天文現象を使ったひので望遠鏡の特性研究

・日食の映像(上図21-23)  散乱光の効果のestimateができる.  → 散乱光のない映像が得られた! ・水星の太陽面通過の映像 8/Nov/2006  ひのでホームページへ ・2011年1月の金環日食  (今回でなく)前回2011年の金環日食  ひのでホームページへ

*まとめ

・太陽研究と周辺分野のつながり  恒星の天文学  宇宙プラズマ  宇宙天気予報

*おわりに

 JAXA宇宙科学研究所,特別公開 7月27−28日  ひので web ページ

*質問

・金星の写真でまわりに見えているものは?  > 金星の雲の層が見えている ・コロナの高温の謎はどうなっているか?  > 次の計画 Solar-C で,彩層の磁場情報を見て研究する.    コロナと彩層の関連性を,高分解能のコロナ像で見る. ・空間分解能?  > 1ピクセル=1秒 ・スピキュールの高さ?  > 3000km以上. コロナに入っていると思われる. ISASニュース,ひので特集