「ヒッグス粒子」の発見

2013年8月17日、月例講演会、駒宮幸男先生の講演を、中嶋がメモ、再構成
(プレゼンテーション図は,画質を16分の1に低下させてあります.)

標準理論による16個の素粒子と,ヒッグス粒子
Wikipediaより

ヒッグス粒子の発見は、大革命の前哨戦

フランス革命は7月14日に始まったが,ヒッグス粒子も同じ7月に
発見が発表された.これも,続く大革命の前哨戦となるものである.







階層構造とそのスケール

 分子 原子 原子核 核子 素粒子

 素粒子には内部構造がない.






大きさの比較
 原子の中の原子核の大きさは,ノミがサッカー場の真ん中に
 いるようなもの.

 電子の回っているところはほとんどスカスカの状態.

 陽子中性子はクォークで出来ている.




素粒子の体系

 素粒子は「世代」と呼ばれる構造があり,同じような性質の粒子
 が3種類の世代に分類される.

 LEP実験のOPALの測定結果から,世代の数は3より多くはないこと
 がわかっている.
 (LEP, OPAL はこちらを参照.)



力(相互作用)ゲージ相互作用
 自然界の現象は,4つの力によって支配されており,またその力は
 粒子の交換によって伝わるとする「ゲージ相互作用」という原理
 に従っている,とされる.

  重力(まだ理論ができていない)
  電磁気(光子を交換)
  強い相互作用(グルーオンを交換)
  弱い相互作用(Z,W粒子を交換)
    ※力が弱いのは,媒介粒子が重いから.
素粒子物理の歴史 エネルギーの単位  電子ボルト(eV)という単位を使う.   電子1個を電圧1ボルトで加速するエネルギー  化学反応  1eV  原子核反応 1MeV  素粒子反応 1TeV  ※錬金術は化学反応のエネルギーで原子核を変換しようとした.   上記のように大きなエネルギー差があるので,錬金術は不可能. 最初の素粒子「電子」の発見  電子は物質の中にどのように入っているかが問題となった. ラザフォードの原子核モデル  発見者 J.J.トムソンは,電子は「ぶどうパン」のぶどう粒のよう  に分布していると考えた.  ラザフォードと長岡半太郎は,電子は太陽系の惑星のように,原子核  の周りを回っていると考えた. ガイガーとマースデンのα線散乱実験  薄い金箔にα線を照射すると,ほとんどはそのまままっすぐ  通過するが,たまに大角度に散乱されることがあるので,小さな  原子核があることがはっきりした. 1930年代の素粒子  ラザフォードの理論を受けて,物質は4種類の素粒子からできて  いると考えられた. 湯川のπ中間子の理論  この理論によって,新しい素粒子が登場した. μ粒子の発見  Anderson Neddermeyer 1937  宇宙線の中に、予期せぬ発見  透過力が強いので、πとは異なる  ともかくやってみると新しい発見がある   πの予言 > μの発見   小柴博士の発見 加速器による新粒子群の発見  多くなりすぎて収拾がつかなくなった素粒子を,坂田昌一が  いくつかの素粒子の組み合わせとして表すことを考えた  (坂田モデル). ゲルマン・ツヴァイクのクォークモデル  坂田モデルを発展させる形で「クォークモデル」が登場した.  u,d,s の3種類のクォークで,すべての素粒子を説明する.  陽子や中性子の中にクォークが存在することは,高エネルギー  電子を照射してラザフォードの実験と同様に確認される. 1974年11月、The November Revolution J/Ψ粒子の発見  1917年11月7日のロシア革命にも匹敵  c(チャームクォーク)の存在が明らかに.  J/Ψ粒子は c と反c が結合したもの.    リンク:SLAC, BNL  その後,次々と新しいクォークや基本粒子が発見され,新しい  素粒子像が確立した. 小林・益川理論  クォークがまだ一部しか発見されていない時期に,クォークが  3世代,6種類あることを予言し,実験で確認されてノーベル賞  になった.        素粒子の世代  3世代であることが実験的に確認されるが,なぜ3つなのか,  理論的にはわかっていない. 標準理論による素粒子の構成
ヒッグス粒子とは 質量とは  物体の動きにくさの度合い 重さと質量  重さは「力」である    重さはバネ測りで測り,質量は天秤測りで測る 真空とは 素粒子物理の(本当の)真空  素粒子物理の「真空」とは最もエネルギーの低い状態。  粒子のエネルギーには運動エネルギーと  ポテンシャルエネルギーがある。  真空では運動エネルギーはゼロ。  ポテンシャルエネルギーのゼロ点は如何なる粒子に対しても最も  エネルギーの低い点。  ヒッグス粒子と真空  南部陽一郎が発見した「対称性の自発的破れ」によって,真空の  状態(ヒッグス場)が変化する.   対称性の破れとは何か  真っ直ぐなものが曲がったりする(対称性が破れる)とエネルギー  が低くなることがある.  エネルギーの低い状態でヒッグスばができる.  ヒッグス場ができると,物質粒子がヒッグス粒子に妨げられて  動きが鈍くなる.それが物質の「質量」となる. まだ解明されていないこと ・素粒子の質量の起源はヒッグス粒子(真空の構造)か? ・何故3世代のクォーク・レプトンがいてそれぞれの質量が異な  るのか?(ニュートリノの質量は何故軽いか?   トップクォークは何故重いか?) ・何故4種類の力があるのか?   いかにして重力を理論の枠組にいれられるか? ・なぜ時空は空間3次元、時間1次元か?   隠れた次元はあるのか? ・暗黒物質は? ・暗黒エネルギーは? ・宇宙はどのようにして生じたか?
加速器について 加速器の歴史 粒子衝突型加速器(コライダー) LHC(ラージハドロンコライダー) ・ 14 TeV の陽子・陽子衝突型加速器 ・ LEPトンネル(周長27km)を利用 ・ 建設に14年 ・ 総建設費は約5000億円(トンネル別) ・ 2008年9月完成、ビーム周回に成功 ・ 2010年3月、7TeVでのビーム衝突 ATLAS 測定器  日本でかなりの部分を製作 LHCでのヒッグス粒子の発見 2つの光子に崩壊するのを見つける 2つのZに分かれるのを見つける 発見の発表の写真 ヒッグスボソン発見の意義  全く新しい粒子  人類の叡智の勝利 国際リニアコライダー (ILC)  ILCの原理:  ZがHを放出する反応は、余分なものが出ないのでHについて  よくわかる. 円形の電子陽電子コライダーの限界  電子の軌道が曲げられる時にエネルギーのロスが大きい. 直線の加速器の利点  エネルギーのロスがない. ILC計画  世界の次期加速器基幹計画。  合計約30km の長さの超伝導直線加速器を地下に設置し、電子と   陽電子を正面衝突させ、宇宙開闢約1兆分の1秒の世界を一瞬   作って研究する。  特に、ヒッグス粒子の性質の詳細研究、トップクォーク、宇宙の  暗黒物質を作っている粒子, … などを研究する。  日本がホストの最有力候補  サイト:北上山地(岩手、宮城)、     脊振山地(佐賀、福岡)  一本化して、推進する。  外国も期待している。  ILC ではヒッグス粒子を徹底して調べる. 大型基礎科学研究 ILC の予算  7〜10年間、一人当たりラーメン一杯の出費 経済・産業への効果   原子時計   インターネット www(CERN が発祥の地)   加速器はF1 医療用の加速器ができる   超伝導 キーワード
質問: *ILCの候補地、日本と中国?  中国は丸い加速器、日本のILCはサポートする *ILCの直線性?  地球の丸みを考慮。 *これまでなぜできなかったか?  エネルギーが不足。 *超対称性粒子?  難しいが、この理論でいろいろ説明できる。  統一理論、暗黒物質、超ひも理論の丸まった6次元が超対称で説明。   *ヒッグス粒子の質量?  126GeVで見つかったが、いろいろな可能性がある。 *分裂は2個?  クォークからはたくさん出る。  2つが最も簡単。