7月19日(土)月例講座   

宇宙観測用CCDイメージセンサのものづくりの現場

                   浜松ホトニクス 村松雅治・鈴木久則 先生
[講演要旨]

 浜松市は、自動車や楽器関連の製造業の会社が多く、ものづくりのまちである。その
中にあって、浜松ホトニクス株式会社は、医療、産業、分析、学術を支える光技術を使っ
た製品を製造・販売している。2002年(カミオカンデによるニュートリノ観測)と
2012年(CERN/LHCによるヒッグス粒子の発見)のノーベル物理学賞に輝い
た物理実験に、数多くのセンサーを提供した。
 当社の宇宙観測用CCDイメージセンサの開発は、大学や研究機関からの要望でスタ
ートした。1990年代より、X線天文用については、大阪大学・京都大学、光学赤外
天文用(すばる望遠鏡用)については、国立天文台と共同開発を行ってきた。1990年
代のX線ダイレクト検出CCDイメージセンサの共同開発の成果として、当社のCCD
が、3つの宇宙観測ミッションに使用された。月周回衛星「かぐや」の蛍光X線スペク
トロメータ、小惑星探査機「はやぶさ」の蛍光X線スペクトロメータ、国際宇宙ステー
ション「きぼう」の全天X線監視装置のX線CCDスリットカメラである。2002年
からは、大阪大学、京都大学、国立天文台、浜松ホトニクスで、完全空乏型の厚いPチャ
ネル裏面入射型CCDイメージセンサの開発がスタートした。このCCDイメージセン
サは、波長1umの近赤外線や10keV付近のX線まで、高い量子効率を持つことが
特徴である。この開発により、すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ(Hyper 
Suprime−Cam)用CCDイメージセンサが完成し、2013年7月には、
M31(アンドロメダ銀河)の全景をシャープかつ一度に撮影した画像を関連の研究機
関・メーカーと共同で、プレスリリースした(第578回駿台天文講座参照)。また、
大阪大学、京都大学、JAXA等と共同で、X線天文衛星ASTRO−Hの軟X線撮像
検出器用のCCDイメージセンサを開発した(2015年度打上げ予定)。
 技術者は大半の時間を問題点の発見・調査・解決に費やす。そこには、技術的なブレー
クスルーの風景がいつも拡がっている訳ではない。特に、科学計測用センサーは、世界
トップレベルのサイエンティストからの要求に応えなければならず、失敗と苦労の連続
である。その中で、約7年かけて開発したすばる望遠鏡主焦点超広視野カメラ(HSC)
用CCDイメージセンサを中心に、技術者達が日々奮闘しているものづくりの現場とは
実際どういうものなのか、を紹介する。

================以下、中嶋追加資料================


 HSCのCCDアレイ
 60 cmの焦点面に116個の
 CCDを配置しています。

 すばるHSCのページより。