5月17日(土)月例講座

     地球を作る実験

              国立天文台教授  小久保 英一郎 先生
[講演要旨]

生命を宿す惑星、地球。暗黒の宇宙の中で青く白く輝く私たちの故郷。地球は
どのようにして誕生したのだろうか。現在考えられている標準的な地球形成シ
ナリオは次のようなものだ。地球をはじめとする太陽系の惑星は、約46億年前
に原始太陽系円盤とよばれる太陽のまわりの円盤から誕生した。この円盤は、
太陽の前の世代の恒星の星くずであるガスとちり(ダスト)からできている。こ
のダストが地球のもとになる。まずダストが集まり、微惑星とよばれる1kmほ
どの小さな天体が生まれる。太陽系全体で1000億個ほどできたと考えられる。
微惑星は太陽の周りを回りながら衝突合体をくり返して大きくなり、やがて原
始惑星へと成長していく。原始惑星とは惑星の一段階前の天体だ。現在の地球
の軌道付近には約10個の地球質量の1/10ほどの原始惑星ができる。円盤のガス
がなくなると、この原始惑星が衝突を始め、最終的に地球が誕生する。ここま
で約1億年かかると見積もられている。そして、太陽からちょうどいい距離に、
ちょうどいい質量と組成で誕生した地球は、海をもつ惑星となった。これらの
形成過程は現在、数値シミュレーションを用いて実験的に研究が進められてい
る。講演ではスーパーコンピュータを用いたシミュレーションの結果を紹介し
ながら、最新天文学が解き明かした地球の誕生物語を解説しよう。 

図: 地球型惑星形成の標準シナリオ





[参考リンク] 国立天文台,理論研究部 小久保先生,ホームページ 関連新聞記事 理科年表オフィシャルサイト,太陽系の作り方