4月18日、平林先生講演記録   (中嶋作成)


※ 画像をクリックすると拡大します(一部を除く).


◎はじめに
 今から50年前,駿台天文講座が始まった1960年代は,天文学上の
 大発見が次々と出現した時代だった.私の研究テーマである
 「電波天文学」が,そこで大活躍をした.
 これをまず年表でたどってみよう.


◎電波(電磁波)の通信への応用の発展の年表
 これに「電磁波による宇宙の探求」の年表を重ねる.




*1960年代の天文学の大発見の年表
 SETI,地球外文明探査のはしり,1960年のOzma計画にも注目.




*特に電波天文学の関わる発見の年表
 これらに関連して4つのノーベル賞が.




*「クェーサー」についての説明
 銀河中心にひそむ超巨大ブラックホールによるらしい




*「電波干渉計」の原理と実例
 基線長の最大のものは,私の関わったVSOP
 今後はALMAやSKA



*電波で見た夜空の写真(米国,グリーンバンク天文台)
 → ほとんどが巨大BH
 3C296 の画像は,M.Ryle卿の「開口合成法」によるもの.
 「3C」は電波源カタログの名称.


*クェーサー3C273のナゾの解明





*3C273が月に隠される現象を利用して,クェーサーを解明.





*掩蔽(えんぺい)観測から,2点構造がわかる.





*2回の掩蔽観測から,2点構造の形を調べる.





*そこを光の望遠鏡で調べると,星のような天体とジェットの
 ような構造が見えた.




*Dec. 26 1962 Maarten Schumidt がスペクトル観測





*スペクトルが大きな赤方偏移を示す
  → 大変遠方にある
  → 莫大なエネルギー



*その本質は「活動銀河核」であるという統一モデルが提唱
 されている.




*電波源「Cyg A」の2点構造の詳細





*宇宙空間を利用したVLBI(超長基線電波干渉計)のための衛星
 「はるか」の打ち上げ.1997年2月.




*「はるか」と,宇宙空間VLBI「VSOP」計画の説明. 
 → 基線の長さは 34,000km !




*VSOP が捕えた,電波源 3C273 の中心部の構造.
 → ジェットの根元にねじれ構造が見える.




*ジェットの発射元は,巨大ブラックホール
 → 研究が進行中.




◎宇宙背景放射





*宇宙通信の歴史の年表
 [Hx入学 というのは平林さんの大学入学のこと:中嶋注]




(年表続き)
 [CMB は Cosmic Microwave Background, 宇宙背景放射:中嶋注]
 [右側の図は宇宙の誕生(上端)から晴れ上がりまでを示す:中嶋注]



*CMB発見の年の私





*ハッブルによる宇宙膨張の発見





*宇宙膨張の発見を受けて,ジョージ・ガモフが,宇宙の始まり
 の「ビッグバン説」を唱えた.




 ガモフは「宇宙の始まりには中性子ばかりがあり,そこから陽子
 (すなわち水素原子核)やヘリウム原子核が生じた」としたが,
 林忠四郎先生は「最初は陽子と中性子であった」ことを明らかに
 した.


 始まりの3分後に,水素(原子核)とヘリウム(原子核)ができた.





 さらに38万年後に,電子が原子核と合体して「水素原子」と
 「ヘリウム原子」になった.光の進行を妨げていた自由電子が
 無くなったために,宇宙は透明になり,「宇宙の晴れ上がり」
 となった.
 宇宙背景放射では,晴れ始めの時の境界が見える.

*宇宙背景放射は,完璧な「黒体放射」.





 宇宙背景放射は大変均一であり,ムラはごくわずか.





 10万分の1のムラを捕らえた「COBE衛星」
 (2006年にノーベル賞)




 さらに細かいムラを観測すべく,次々と衛星が打ち上げられた.

 (このムラの中に,宇宙の始まりの重力波の影響を偏波観測で
 発見したとの報告が,2014年にあった.)


◎1967年(大学院入学)パルサーの発見

 [平林さんの年表を重ねる:中嶋注]









*ケンブリッジの電波観測(Anthony Hewish)
  電波天体が小さければ,またたく.
  → 波長の長い電波のまたたきを観測する装置



 この装置で「パルサー」を発見した.
 [右の図はケンブリッジの観測装置と,発見者の J.ベル,左の図は
 X線天文学関係の図: 中嶋注]


 
 パルサーは「中性子星」であることがわかり,1969年,実際に
 かに星雲の中にあることがわかった.
 これはブラックホール(BH)の発見にもつながる
  → x線天体「Cyg X-1」はBHの連星


 中性子星,BH,九州の地図との比較





*(中性子星のような)コンパクト星と超新星の観測の歴史





 中性子星の連星の観測から,「重力波」が存在することが
 間接的に証明され,ノーベル賞になった.

 たくさんのパルサーが発見されれば,BHと中性子星の連星も.


 パルサー発見者,ジョスリン・ベル=バーネルさんが,
 私の60歳の誕生日の日に宇宙研を訪問.




※宇宙と元素に関するノーベル賞年表





*パルサーに関連した最近のナゾ
 SRB (Strong Radio Burst)




 人工的な電波でないことは確か.
 パルスの分散の観測から距離がわかるが,銀河系外である
 ことは確か.



◎まとめ 
 1969年代の衝撃はまだまだ続いている.




 著書2冊を紹介





 50年間の時の流れ





 駿台天文講座の50年前と私達





 英国には,1825年から続く「クリスマス講演」というのもある.





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質問
*X線星とは? 他の天体もX線が?
 > 1963はX線だけ
   現在では色々な波長で見ることができる
   重力波はまだ

*1965CMBについて.他の宇宙との関連はどうか?
 > 他の宇宙は,観測では見えないと考えられる.

*宇宙の仕組みについて知るには,さらにどのような観測が必要か?
 > 何を知りたいか,宇宙と生命か,インフレーションか,
    宇宙始まりの暗黒時代を知りたいか,宇宙の知的生命か,
   > 研究者によって答えが異なる

*CMBは,晴れ上がりの瞬間がフラッシュのように見えるのか?
 > ある一瞬の壁が見えているが,見える壁は年を追って徐々に
   遠方のものが見えるようになる.

*ALMAの現状?
 > 惑星系の形成の様子が(予想通り)見え始めた

*ねじれたジェット? 
 > 限りなく光の速さに近い
   どうやってそのように加速できるか,まだよくわかっていない.