6月20日(土)、大島泰郎先生講演記録   (中嶋作成)

ETはいるか? − 地球外の知的生命体を探る 


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◎はじめに

 私の専門は生命科学なので,まず地球の生命のお話をして,
 それから宇宙のテーマへ進みます.



◎生命史と化石






*放射性元素による化石の年代測定
 14C(炭素14)による年代測定:
  宇宙から絶えず降り注ぐ宇宙線により,窒素が核変化を
  起こして14C になる.宇宙線は一定なので,14C と14C 
  の割合は一定になる.これらの C が植物などに取り込
  まれると,そこで14C と14C の割合が固定される.
  その後14C は一定の割合で減少し,約5700年で半分になるので,
  14C の量を測定すると年代がわかる.
※この5700年を「半減期」という.

*14C の他にも,右図のように,いろいろな半減期の
 放射性元素があり,いろいろな年代が測定できる.

*微化石の年代
  何億年も前は単細胞の生物しかいなかったので,「微化石」
  で年代を調べる.
  ガンフリント層は,アメリカ北部,スペリオル湖のカナダ側
  にある.

*最古の化石?
  単細胞の集合(シアノバクテリア)






*化学化石
  DNA 解析は1万年前まで
  古いものは炭化水素(油)を分析(オイルシェール)
  もっと古ければ 13C (自然界の13C の割合はほぼ 1%
    であるが,生物では 13C が少ない.)


  グリーンランド,イスアは13Cが生物寄り
   → 39億年前の生物の存在を示すか?


*地球生命史
  生命以前は5億年しかない

  生物は保守が本質,高等生物への進化はほんとにゆっくり
  90%は,目に見えない単細胞生物時代 


◎進化時計
  遺伝子の変化を追跡して,進化の年代を測る.





  タンパク質はアミノ酸が結合したもの.その配列によって
  性質が決まる.

  最初のアミノ酸配列の決定は,1955年,F.Sanger による
  もので,「インスリン」のアミノ酸配列を決定した.


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  インスリンなどの体内物質のアミノ酸配列は,動物によって
  少しづつ異なる.
   → アミノ酸配列の違いを分類すれば,進化の流れがわかる.

   → 分子進化学


   (右図拡大)





  分子進化学は,木村資生先生の業績.




  分子系統樹 Molecular tree により,今の生物の遺伝子
  を調べれば,化石がなくても進化がわかる.




◎恐竜の絶滅
  生物の進化は,何度も大絶滅を経験している.
  いつ全滅して振出に戻ってもおかしくはない状況だった.
  人類までの進化は,苦難の連続.



  恐竜の大絶滅の原因について,アルバレス親子の仮説
  「大隕石の衝突」が,現在では認められている.


  ユカタン半島に,巨大隕石孔が見つかった.








  高さ300mという大津波が襲った.




*生命の歴史は大絶滅が作った

  (右図拡大)




  大量絶滅の歴史(6回の大きな絶滅があった)
    (2億3千万年前は種の90%が絶滅)

 ※大絶滅の原因はわかっていないものが多い.



  「スーパープルーム説」
    スーパープルームというマントル対流が発生し,熱エ
    ネルギーが上昇,火山が沢山噴火して気候が変化した.

  「超新星爆発の放射線説」
    太陽系の近くで超新星爆発が起こり,大量の放射線が
    地球に降り注いだ.

 ※いずれにしろ宇宙的原因が考えられる.

  「全球凍結 Snowball Earth」
    22億年ころに1回,7.5〜5.8億年の間に2回

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    陸地は1000m の氷におおわれた 

 ※「水」は(他の物質と異なって)固化すると比重が軽くなり,
  液体部分の上に浮かぶ.それゆえ,海底部分では液体の中で
  生物が生き延びることができた.


    全球凍結後に進化が爆発している.

   (右図拡大)





*生物の分類
  原核細胞の生物(真正細菌,古細菌)
  真核細胞の生物(高等生物)


 原核細胞の構造(大腸菌など)
  遺伝子は細胞の中に漂っており,核のようなものはない.


 真核細胞の構造(高等生物)
  遺伝子は「核」の中に(金庫のように)守られており,
  他に「ミトコンドリア」などの小器官があって,分業が
  行われている.

*進化の大爆発
  5億年前に多くの多細胞生物が発生し,「進化の大爆発」
  があった.
  Charles Dolittle Walcott がカナダ,ブリティッシュコ
  ロンビアで多くの化石を発見し,これがわかった.

  「アノマロカリス」など,奇妙な生物も. 




◎ETは いるか?







*Drake の式の評価
  天文学のパラメータは大体決まる
  生命学のパラメータは決まらない
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   (右図拡大)






*宇宙生命は存在するか?

   (右図拡大)

 


 生命発生は宇宙に普遍的に成立
  材料は隕石や彗星に見つかる
  電波天文の星間分子でも材料がわかる




   (右図拡大)


*生命の特殊性
  遺伝子を別の細胞に入れて生物ができる.
  「くまむし」は乾燥しても水に入れたら生き返る.
    宇宙に出しても生き返る
  
 しかし物質と生命の境界はまだよくわかっていない
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*ドレークの式と知的文明の存在の関係
  右図のように,知的文明の生存期間 (L) が大きければ
  それだけ地球外知的文明の発見の確率 (N) も大きくなる.
  私の推計では,N = 0.1xL 程度であり,人類の寿命が
  10億年であれば 1億個の地球外文明が存在することになる.
  (逆に,地球外文明がまだ一つも見つかっていないことから,
  N<1 とすると,L<10 となり,人類はもう滅びていること
  になる! [中嶋追加])

*ヒトへの進化は苦難の連続
  平和な環境では,何十億年たってもバクテリア以上に進化
  しない.
   (右図拡大)



◎ETとの会話
 悲観的な見方
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*フェルミ・パラドクス
  ETがいるなら宇宙全域に進出するはず
   (右図拡大)



*異種生物の接触は危険
  人獣共通感染症は,多くの場合重篤な病気
   狂牛病 新型インフルエンザ 
   (コロナウィルスはコウモリ?)

 ※人間に宇宙人の病気が移ったら大変.


質問 *ウィルスは生物か物か.  > ポーリングは「生物は定義するより研究するものだ」と言った.    定義は? 見ればわかる(幼稚園でもわかる)    基礎生物学では「生物の要件を欠く」=「新陳代謝しない」    細菌学ではウィルスを細菌の一部門として研究している. *人工生命に名前を書き込むには?  > 20種のアミノ酸にそれぞれ記号を決めているので,それを利用して    文章を書き込むことができる.    方法は発表されていない. *生き物の生きて行く力?  見ればわかる直観の正体は?  > 人間は脳波で定義,これは法律で便宜的に決めたもの.    死んでも物質的にはほとんど変わらない.    微生物でも,培養できないものも多い,     生きているものと死んでいるもの,その中間のものなどが混ざっている.   > 人間も生き返るかもしれない. *宇宙に生命がいる,という考え(前提)で研究してきたか?   > はい.     ただし存在は悲観的であり,どういう研究をすればよいかもわからない.     大変むずかしい問題であり,研究方法がわかっていれば(講演などには     来ないで)ひたすら研究している.                         以上