第50期 駿台天文講座  第591回講演  講演要旨
   共和化工株式会社 環境微生物学研究所 所長  大島 泰郎 先生

ETは いるか? − 地球外の知的生命体を探る 


 銀河内の文明社会の数を推計する有名なドレイクの方程式では、式の前半の各項に、比較的正確な数字を入れることができるのに対し、後半の生物進化や文明社会の寿命など、生命がかかわる項はあてずっぽうの数字を入れていることが多い。ここでは最近の知識に基づいて、生命が誕生し、進化の結果、知性を持つ生物が生まれ、それが文明社会を構築する可能性を検討し、銀河系内のET存在の可能性を再考してみたい。

 生命の起原に関し、生命を生み出すに必要な物質、タンパク質の構成分子である多種のアミノ酸や核酸の塩基、糖、リン酸、それに生体膜を作る脂質などが、地球に似た惑星上で合成される可能性には、異論を唱える研究者はいないだろう。問題は、物質と生命の間の境は簡単に越えられるか?である。この課題を探る研究は、まだほとんど手がつけられていない。

 地球上では生命が誕生すると、生物進化が始まり、より高等な生命が現れてきた。すこしでも過去を記憶し、その経験に基づいて行動する生物は、生存競争の中で有利であったろう。したがって、生命は誕生すれば、より知能の高い生物を生み出す方向に進化は進むだろうし、これは他の惑星上でも同じであろう。

 近年、生物進化の歴史に関し、多くの新知見が得られた。高等生物への進化は、恐竜の絶滅に代表されるように、何回もの大絶滅の危機を乗り越えてきた。進化史はまるで綱渡りで、どこで途切れてもおかしくなかった。地球では幸運にもヒトのような知性を持った生物が進化してきたが、地球に似たよその惑星上では、せっかく生命が誕生しても途中で絶滅し、ETや文明社会に達しなかったかもしれない。ETの存在に関し、私は昔ほど楽天的にはなれなくなっている。


関連資料(以下,中嶋記入)
*ドレイクの式(須藤先生の講演記録より)


  *共和化工株式会社 環境微生物学研究所