5月16日、須藤先生講演記録   (中嶋作成)

系外惑星から宇宙生物学へ


              	     ※ 画像をクリックすると拡大します(一部を除く).
◎はじめに 
 20年前,1995年に初めて系外惑星が発見された.
  → 近年研究が大きく進展したので,その話を.



◎太陽系外惑星の発見 
 20年以上前には,太陽系以外の恒星の周りに惑星があるか
 ないかは全くわからなかった.



*系外惑星発見史  
  最初は1995年のペガスス座51番星
  一つ見つかって次々と発見されるようになった.
  (当たり前と思っていたことが当たり前でなかった)
  今は3000個くらい
  惑星系としては,惑星が7個あるものまで見つかっている.
*発見の方法 
  (右図のとおり.グラフはトランジットの時の明るさの変化)
  太陽系の木星を考えると,トランジットが起こるとしても12年
  に一度であり,トランジットでそう簡単に惑星が発見されるとは
  考えられなかった.ところが最初の発見の惑星は4日で一回りで,
  あり得ないと思われていたことが実際にあった.

*ケプラー探査機
  はくちょう座の一部の狭い天域で,10万個の星の明るさの変化
  をひたすら観測し,トランジット法で惑星を発見する.



*現時点でわかっていること
  (右図のとおり.)
  4年の観測で3割以上だから,もっと観測すればほとんど全ての
  恒星が惑星をもつ可能性すらある.


*ハビタブルゾーンの考え方の図
  実際に発見された惑星が図に記入してある.




*ハビタブル惑星候補 Kepler-22b
  太陽系と比較する










*バイオマーカーについて
  (右図のとおり.)




◎天文学から「宇宙生物学」へ
  (右図のとおり.)




  地球を外から観測したらどう見えるか.





*木星探査機「ガリレオ」による地球観測
  前記のいろいろなバイオマーカーについて,地球外から実際に
  観測してみた. → 地球には生命の兆候がある!



*地球の近赤外スペクトル
  酸素やメタンが見られる.




*レッドエッジ
  場所にもよるが,緑の多いところでは明らかにレッドエッジが
  ある.



*地球の電波信号
  上図は自然発生の電波,下図は人工的な電波の拡大図




*ボイジャー1号による,太陽系外縁からの惑星撮影
  惑星は,太陽系の近くで見てもごく小さい.(まして遠方からは)
  「ペイル・ブルー・ドット」の由来



*ペイル・ブルー・ドットとボイジャー1号の図





*土星探査機「カッシーニ」から見た地球と月
  太陽が土星に隠される時を選んで撮影.
  撮影は予告され,約2万人が土星を見ていたと考えられる.



◎もうひとつの地球の観測





*Starshade project (プリンストン大)
  明るい中心星を隠して,惑星を観測
  → NASA 動画



*「ドット」にしか見えない惑星をどのように観測するか
  自転に伴う色の変化などは見える.




*自転による色の変化を,地球でシミュレート





*シミュレーションの結果から,経度方向のいろいろな要素の分布
 を推定.
  → 雲が難しい.



*植物の色の予想図
  太陽系の太陽(G型星)では,植物の色は緑であるが,他のスペ
  クトル型の中心恒星では色が異なるのではないか.



◎地球外文明はあるのか?
  ドレイクの式の説明(略)
  最初の4項についてはかなりわかってきた.
  後の4項が難しい.


*SETI計画
  知的生命からの電波信号を捕らえる.

  1960年,オズマ計画


  1974年,アレシボ・メッセージ

  → このようなことは危険ではないか,との批判もある.



*可視光SETI
  100光年先の100Wのレーザー光ならば十分検出可能




◎まとめ





*天文学から「宇宙生物学」へ
  近年の惑星の発見で,世界観の大変化が起こった.




*予想も出来ない展開が
  → 地球外文明の発見が先か,人類の滅亡が先か.




※宇宙生物学の心は「星の王子様」




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質問

*ほとんどの星は変光している.どのように区別するか? 
 > トランジットによる変光は特徴的な時間変動パターンを示す
   ことを利用して区別(右図).
 > 実際の変光星も膨大な数が見つかっている.

*(もうひとつのご専門の)相対論との関係は?
 > まったく別.

*ハビタブルゾーンについて?
 > 「衛星」のハビタブルゾーンというのも考えられるが,
   系外「衛星」はまだ発見されていない. 
   (太陽系の)衛星探査の宇宙生物学もとても重要.

*地球外に生命があると信じて研究されているか?
 > 物理学をやっていると「物理的にはありえない」ということはわかる.
   しかしまた「あるかないかわからない」というものは,これまでの天文
   観測でほとんど実際に発見されている.
   たとえばブラックホール(方程式から解はすぐ出るが,現実にはあり得
   ないだろうと思われていた).
   中性子の星も,常識的にはないだろうと思われていた.

 > 「星の王子様」の文章が宇宙生物学者の気持ちをよく表している.