2016年7月16日 第604回 月例天文講座 

星が「死ぬ」とはどういうことか ー 超新星爆発の謎に迫る

                    国立天文台  田中 雅臣
1.星は爆発している
 夜空に浮かぶ星々はいつも同じように輝いているが、宇宙では星が爆発していることが知られている。星が一生の最期に起こす「超新星爆発」である。超新星爆発の記録は明月記などにも残されており、100年に1回ほど肉眼で観測されている。これらは私たちの太陽系が属する「銀河系」の中で起きた超新星爆発である。現代の天文学では、望遠鏡を用いた観測によって、銀河系の外の銀河で起きる超新星爆発が年間500例以上も発見されている。宇宙では星が爆発しているのである。

2.星の一生と元素の起源
 星の中では核融合反応が起きており、星はこの核融合によって明るく輝いている。特に、太陽よりも10倍以上重い星は、炭素、酸素、マグネシウム、ケイ素などをつぎつぎと星の中心につくり出し、最後は星の中心に鉄をつくり出す。星の中心が鉄になると、それ以上核融合反応が起きず、星は自分の重力によって潰れてしまう。この時、中心にできる超高密度の核に跳ね返るように星が爆発を起こすと考えられている。これが超新星爆発のメカニズムである。超新星爆発によって、星が内部に合成された元素が宇宙空間に放出され、宇宙に重元素がもたらされたのである。

3.超新星爆発の謎に迫る
 超新星爆発にはまだ多くの謎が残されており、現代天文学の研究の対象となっている。もっとも大きな問題の一つは、超新星爆発に至るメカニズムである。星が潰れた後、いかに爆発に転ずるかは詳しくは解明されていない。現在も世界中で詳細なコンピュータシミュレーションが行われている。もう一つの謎は、超新星爆発に至る星の爆発の直前の姿である。この問題に挑むため、現在様々な超新星爆発探査が行われている。すばる望遠鏡を用いた私たちの取り組みを紹介したい。

4.番外編:死してもなお
 超新星爆発が起きた後、星の中心には「中性子星」もしくは「ブラックホール」が残される。これらの天体が2つ合体すると、強い「重力波」が放たれることが知られている。実際、2015年9月にはブラックホールの合体から放たれた重力波が初めて直接観測された。数年のうちに、中性子星の合体からの重力波も捉えられることが期待されている。近年、中性子星の合体は鉄よりも重い元素をつくり出し、それによって私たちの目にも見える光で明るく輝くことが分かってきた。重力波天体からの光を探査する取り組みについても紹介したい。


参考資料(中嶋作成)
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