2017年11月18日 第620回 月例天文講座

ハッブル 宇宙を広げた男  

   国立天文台 名誉教授  家 正則  
 

           (右はTMT望遠鏡,完成予想図)

 20世紀最大の天文学者エドウィン・ハッブルの人生と業績、その背景について、2016年刊行の拙著「ハッブル-宇宙を広げた男」(岩波ジュニア新書)を軸に講演する。
まずは、近代天文学を形作ったチコ・ブラーエ、ヨハネス・ケプラー、ガリレオ・ガリレイ、アイザック・ニュートンの流れを追い、ハッブルが登場した時代までの天文学を概観する。その後、本講演の主役であるエドウィン・ハッブルの生い立ちと天文学者となるまでの数々のユニークなエピソードを紹介する。
 天文学史上のハッブルの三大業績は,(1)セファイド型変光星によるアンドロメダ銀河の距離測定、(2)銀河のハッブル分類体系の提案、(3)膨脹宇宙の発見である。これらの発見の経緯とまつわるエピソードを解説する。(3)とおそらく(1)は今ならノーベル賞受賞に値する業績であった。膨張宇宙の発見で、ハッブルは世界的に有名な天文学者となったが、周囲との衝突も多く、実は同僚や後輩から慕われたとは言いがたい。パロマーの5m望遠鏡の完成に寄せたハッブルの期待は結局実現することなく、病に倒れた。
 ハッブルの偉業から未だ100年経っていない現在だが、ジョージ・ガモフのビッグバン宇宙論の提唱、宇宙背景放射の発見を経て、人類の宇宙観は大きく広がった。ハッブルの功績はハッブル宇宙望遠鏡にその名を残す形で称えられている。
 現代宇宙論の観測的研究では,ハワイに建設したすばる望遠鏡を用いて,日本の研究者群がライマンα銀河の探査から「宇宙の夜明け」を目撃することに成功した。この流れは次世代超大型望遠鏡TMT計画へと受け継がれることになる。




[参考](中嶋浩一記)
*右上カットは,国立天文台家TMT推進室のページより.
*図書は,会場で入手できます(著者署名入り).