◎自己紹介: 所属: 国立天文台RISE月惑星探査検討室,特任研究員 研究内容: 太陽系小天体の軌道の研究, はやぶさ2のレーザー高度計の開発にも携わる. 今日のお話: 1)太陽系の姿 2)オールトの雲
◎太陽系の姿 *太陽系の天体の定義 惑星 定義:十分大きく,まわりに天体がない. 例:(略) 準惑星 定義:十分大きいが,まわりに他の天体を残す 例:冥王星,ケレス,など 衛星 定義:惑星などのまわりを回る天体 例:月,タイタン,トリトン,など 残りは「太陽系小天体」 *惑星の配置の図 固体惑星 ガス惑星 氷惑星 引用元 *軌道 距離の単位: au(天文単位) = 地球の軌道半径の大きさ 軌道の大きさ: 例: 木星(5 au) 海王星(30 au) *質量 質量の単位: 太陽単位,木星単位,地球単位,など 例: 木星は太陽の0.1% 地球はその300分の1 *惑星の誕生 分子雲 ↓ (1)→ 原始太陽 + 原始太陽系円盤(固体と気体) 固体は氷を含む (2)→ 微惑星(数km) (3)→ 太陽系小天体 + 微惑星 *どんな小天体があるか メインベルト小惑星 + 海王星以遠天体(TNO) 地球近傍小天体(NEO)→ 外から供給された ケンタウルス(木星と海王星の間) オールトの雲(1000au以遠) 尾を持つ(太陽近傍の)彗星 *オールトの雲 天文台の図(あまり正確でない) 引用元 10万au,1〜10兆個 彗星は数kmの大きさ もともとは近くにあったものが飛ばされて, 球状になった. 太陽系外に放り出されたものもあるはず. → 浮遊彗星 太陽の方向に来ると彗星となり,それが 捕えられると衛星や小惑星になる. *彗星と小惑星の違い 見た目: コマ(大気)を持つか否か 軌道: 細長い楕円軌道か 区別できないもの: 活動的小惑星 尾のない彗星 Manx object (Meech + 2016) → マン島にいる尾のない猫 図の引用元 あまり区別できない
2)オールトの雲 *オールトの雲と彗星 ・太陽系の天体の軌道 ケプラーの法則 1,2,3 (略) → 軌道周期[年] = 軌道半径[au]の1.5乗 ・軌道を楕円軌道からずらすもの: 惑星の重力 銀河系の重力(遠方からくる彗星) 非重力効果(ジェットの吹き出し,太陽熱) ガス抵抗(太陽系生成の昔の頃) → 研究は・・・ *「軌道要素」とは何か 引用元 Wikipedia 軌道長半径 a (右図 MP') 近日点距離 q (右図 BP) 遠日点距離 Q (右図 BP') 離心率 e (e=0 は円, 0<e<1 は楕円, e=1 は放物線, 1<e は双曲線) 軌道傾斜角 i (右図) → いろいろな離心率の例の図 → マクホルツ藤川岩木彗星の例(放物線軌道,e=1)(ステラナビゲータより) *メインベルト小惑星の離心率の図 → 0.3以下が多い 引用元 *軌道傾角の図 引用元 → 分布に塊りが見える = 族(family) 平山族の発見から,今年で100年 *オールトの雲彗星の軌道傾角の図 (略) → 完全にばらついている *オールトの雲の形成 惑星重力による遠方への輸送(1) 非常に細長い楕円軌道になる 軌道傾角はあまり変わらない 球状分布への進化 近日点距離を引き上げる必要 銀河系からの外力 近傍恒星 太陽系が銀河面から傾いているので潮汐力で傾きが変化 10万年に1度くらい,恒星が近くを通る → 影響がバラバラななので,軌道傾角も変わる. これまでの恒星の影響で,彗星天体の数が半分くらい減ったのではないか. 恒星が雲の中を通過した場合 → コメットシャワー(大量の彗星が出現)があるかもしれない. *浮遊彗星 ウアムアムア (A/2017 U1) e=1.2 双曲線軌道 → 彗星の離心率としては飛び抜けて高いので,太陽系外からやってきたと考える人が多い. しかし、オールト雲からやってきた可能性も否定できない.
質問: *雲の大きさの確認,どれくらいの距離? > よく1パーセク以内であってほしい. 4パーセクでは太陽の引力が効かない. * 恒星が10万年に1回通過するとすれば,10万年前 ころに通過した恒星を計算で判定きないか? * ウアムアムアへの恒星の影響は計算できないか? > 宇宙望遠鏡ガイアが作った恒星カタログを使えばわかる かもしれないが,現状ではそのような星はない. しかしガイアにも載らないような小さい褐色矮星 で十分影響があるので、そのようなガイアに見えなかった 天体がオールト雲を通過しウアムアムアを作った可能性はありうる。 *オールトの雲の証拠は?どうして考えたか? > 1950年にオールトが,19個の彗星の軌道を調べ, 軌道の遠地点が遠いこと,いろいろな方向から来て いること,などから考えた. 実際にたくさんのサンプルを使っても同様な結論が 得られる.