11月17日(土)、樋口有理可先生講演記録   (中嶋作成)

オールトの雲と彗星 


◎自己紹介: 所属: 国立天文台RISE月惑星探査検討室,特任研究員           研究内容: 太陽系小天体の軌道の研究,                 はやぶさ2のレーザー高度計の開発にも携わる.   今日のお話: 1)太陽系の姿          2)オールトの雲
◎太陽系の姿 *太陽系の天体の定義   惑星  定義:十分大きく,まわりに天体がない.        例:(略)   準惑星 定義:十分大きいが,まわりに他の天体を残す        例:冥王星,ケレス,など    衛星  定義:惑星などのまわりを回る天体        例:月,タイタン,トリトン,など    残りは「太陽系小天体」                *惑星の配置の図     固体惑星   ガス惑星   氷惑星        引用元 *軌道                    距離の単位: au(天文単位)          = 地球の軌道半径の大きさ   軌道の大きさ: 例: 木星(5 au)               海王星(30 au) *質量    質量の単位: 太陽単位,木星単位,地球単位,など       例: 木星は太陽の0.1% 地球はその300分の1        *惑星の誕生   分子雲     ↓  (1)→ 原始太陽 + 原始太陽系円盤(固体と気体)                  固体は氷を含む  (2)→ 微惑星(数km)  (3)→ 太陽系小天体 + 微惑星 *どんな小天体があるか   メインベルト小惑星 + 海王星以遠天体(TNO)   地球近傍小天体(NEO)→ 外から供給された   ケンタウルス(木星と海王星の間)   オールトの雲(1000au以遠)   尾を持つ(太陽近傍の)彗星 *オールトの雲     天文台の図(あまり正確でない) 引用元   10万au,1〜10兆個   彗星は数kmの大きさ   もともとは近くにあったものが飛ばされて,    球状になった.   太陽系外に放り出されたものもあるはず.    → 浮遊彗星   太陽の方向に来ると彗星となり,それが    捕えられると衛星や小惑星になる.    *彗星と小惑星の違い   見た目: コマ(大気)を持つか否か   軌道:  細長い楕円軌道か   区別できないもの:    活動的小惑星      尾のない彗星 Manx object (Meech + 2016)     → マン島にいる尾のない猫    図の引用元   あまり区別できない
2)オールトの雲 *オールトの雲と彗星  ・太陽系の天体の軌道    ケプラーの法則 1,2,3 (略)     → 軌道周期[年] = 軌道半径[au]の1.5乗  ・軌道を楕円軌道からずらすもの:    惑星の重力    銀河系の重力(遠方からくる彗星)    非重力効果(ジェットの吹き出し,太陽熱)    ガス抵抗(太陽系生成の昔の頃)   → 研究は・・・           *「軌道要素」とは何か  引用元 Wikipedia        軌道長半径 a (右図 MP')    近日点距離 q (右図 BP)    遠日点距離 Q (右図 BP')    離心率   e (e=0 は円,             0<e<1 は楕円,             e=1 は放物線,             1<e は双曲線)    軌道傾斜角 i (右図)   → いろいろな離心率の例の図    → マクホルツ藤川岩木彗星の例(放物線軌道,e=1)(ステラナビゲータより) *メインベルト小惑星の離心率の図        → 0.3以下が多い      引用元 *軌道傾角の図          引用元       → 分布に塊りが見える        = 族(family)     平山族の発見から,今年で100年 *オールトの雲彗星の軌道傾角の図  (略)   → 完全にばらついている *オールトの雲の形成   惑星重力による遠方への輸送(1)    非常に細長い楕円軌道になる    軌道傾角はあまり変わらない   球状分布への進化    近日点距離を引き上げる必要    銀河系からの外力    近傍恒星   太陽系が銀河面から傾いているので潮汐力で傾きが変化   10万年に1度くらい,恒星が近くを通る    → 影響がバラバラななので,軌道傾角も変わる.      これまでの恒星の影響で,彗星天体の数が半分くらい減ったのではないか.   恒星が雲の中を通過した場合    → コメットシャワー(大量の彗星が出現)があるかもしれない. *浮遊彗星 ウアムアムア (A/2017 U1)   e=1.2 双曲線軌道    → 彗星の離心率としては飛び抜けて高いので,太陽系外からやってきたと考える人が多い.      しかし、オールト雲からやってきた可能性も否定できない.      
質問: *雲の大きさの確認,どれくらいの距離?   > よく1パーセク以内であってほしい.     4パーセクでは太陽の引力が効かない. * 恒星が10万年に1回通過するとすれば,10万年前  ころに通過した恒星を計算で判定きないか? * ウアムアムアへの恒星の影響は計算できないか?   > 宇宙望遠鏡ガイアが作った恒星カタログを使えばわかる     かもしれないが,現状ではそのような星はない.     しかしガイアにも載らないような小さい褐色矮星     で十分影響があるので、そのようなガイアに見えなかった     天体がオールト雲を通過しウアムアムアを作った可能性はありうる。 *オールトの雲の証拠は?どうして考えたか?   > 1950年にオールトが,19個の彗星の軌道を調べ,     軌道の遠地点が遠いこと,いろいろな方向から来て     いること,などから考えた.     実際にたくさんのサンプルを使っても同様な結論が     得られる.