2019年1月19日 第634回 月例天文講座 

御池山隕石クレーターの研究過程

  飯田市美術博物館 客員研究員  坂本 正夫



 御池山隕石クレーターは,長野県飯田市上村で南アルプス山麓の標高約1900mのしらびそ高原にある. 直径約900mの約4割の円形地形が残っていて,クレーター内に林道が縦貫している. この隕石クレーターはどのように研究されてきたのかを中心に述べる.

1 隕石クレーターとはどのようなものか.
 クレーターとは,火山の噴火口をボルカニッククレーターと言い,小惑星などの衝突でできた地形を インパクトクレーターや隕石クレーターと言う.月にも火山クレーターがわずかにあるが, 多くは隕石クレーターである.地球にも200個ほどの隕石クレーターが確認されている.

2 なぜクレーターと考えたのか.
 南アルプスの2億年ほど前の地質を研究している過程で,不思議な地形に出会った. 半円形の地形の外側に不規則なデコボコ地形が取り巻いている. 研究している地域の一般的な地質や地形のでき方では説明できない地形だった. この地形はどうしてできたのか,それにこだわって考えて調べていくうちに, 隕石クレーターではないかと考えるようになり,調査に乗り出した.

3 クレーターの証拠は見つかったのか.
 国内の地質や隕石の研究者に相談したり,外国のクレーターの研究論文などを入手して読んだり, ドイツのクレーターを訪問し,どんな研究をしたら分かるのか教えてもらったりした.そして, 衝撃変成組織のできた石英を探すことが,世界中で最も多く研究されていることだと分かった. さっそく,岩石ハンマーより堅いチャートという岩石内にある石英脈を採集し,大量のプレパラートを作成し, その中にわずかに衝撃変成組織のある石英を発見した.

4 大地はどんな変形をうけたのか.
 小惑星の衝突によってクレーターの地形が形成されると,クレーター内の岩盤が細かく割れる. クレーターの中心から放射状と同心円状の割れ目ができている. さらにそれらの割れ目ができたために重力が少し減少している.そうした世界のクレーターに共通した現象が見つかった.

5 現在研究していることは何か.
 クレーターの外側の丘で,ニッケルや鉄・クロームなどの入った微小な球粒がたくさん見つかった. これらがクレーター形成に関わる物質なのか,さらに詳細に分析を行う予定である.


[参考](中嶋記)
*右上カットは,信州,遠山郷のページより.(クリックで拡大.)
wikipedia 御池山クレータ
信州スタイルのページ