2018年10月27日 第631回 月例天文講座 

アストロバイオロジー:
    宇宙における生命の起源と探査

  東京薬科大学名誉教授     山岸明彦  


1、 生命の元、元素は宇宙で作られた
 銀河の中には暗黒星雲と呼ばれる領域がある。暗黒星雲の中で星が誕生する。星の中で進行する水素原子の核融合によってほかの様々な元素が作られた。星の中の水素がすべて核融合に使われると星は一生を終える。質量の大きい星は超新星爆発を起こし、重い元素を合成するとともに元素を宇宙にばらまく。生命を構成する元素を調べると、炭素、酸素、水素、窒素などで構成されている。生命は宇宙を構成する元素の内でも比率が多い元素からできている。

2、 生命をつくる分子、有機物は宇宙からやってきたか?
 生命を構成する分子をしらべると、水が約70%、残りの大部分は有機物である。生命は有機物をつくることができるが、生命の誕生前に有機物はどのようにつくられたのだろう?有機物は暗黒星雲の中に見つかっている。暗黒星雲から有機物が隕石や宇宙塵によって運ばれたのではないかと考えられている。

3、生命の起源を探る「たんぽぽ計画」
 1)たんぽぽ計画とは
 たんぽぽ計画では生命の起源に関わる二つの考え(仮説)を調べる。ひとつは、生命の起源に関わる有機物が宇宙塵にのってやってきたのではないかという考え、もう一つは、宇宙を生命が移動できるのではないかという考えである。この二つの考え方は、たんぽぽが綿毛のついた種を風にのせてあちこちに運ぶことに似ているので、「たんぽぽ計画」と名付けられた。
 2)たんぽぽ計画での宇宙塵捕集
 たんぽぽ計画ではエアロゲルという密度の非常に低い固体を用いて宇宙塵を捕集する。すでに、宇宙塵が空けた穴(トラック)が100個以上みつかっている。
 3)たんぽぽ計画での微生物曝露
 もし、宇宙を微生物が移動するとしても、微生物は宇宙空間で生きていられれるのだろうか?それを確かめるために、地球でも放射線や紫外線にもっとも強い菌を宇宙空間で1年間曝露した。その結果をお話しする。

4、火星での生命探査
 1)火星での有機物と水の発見
 火星には大気があり、火星では水や有機物が発見されている。火星に微生物はいないのだろうか?
 2)火星での生命探査計画
 火星で生命を探すとき、どのように探したらよいだろう?顕微鏡をつかえば生命が見つかるのではないかという探査計画を準備しているところである。もし計画が実現したら、火星にロケットで無人の探査車(ローバー)を送る。探査車は水の出ているところに移動して顕微鏡で撮像して画像を地球に転送する。2020年代の後半の実現を目指している。


[参考](中嶋記)
*右上カットは,たんぽぽ計画ホームページより.
山岸先生ホームページ
著書『アストロバイオロジー』