2019年11月16日 第644回 月例天文講座 

宇宙をうたう
   --短歌のなかの天体や探査機

                 歌人  松村由利子先生

 万葉の昔から、人々は夜空を見上げ、宇宙について思いを馳せていた。月や星の詠まれた歌を鑑賞することで古代の人々の暮らしや文化が見えてくる。また一方で、現代の歌人がどんなふうに天文の歌を詠んでいるかを紹介し、宇宙についての情報が新しい抒情につながっていることを楽しむ。


1) 月を愛でた万葉人
 万葉集には、星を詠んだ歌は非常に少ない。なぜだろう――。
 ところが、月は「花鳥風月」といわれるように、万葉の昔から詩歌の世界における大きなテーマとされてきた。闇夜を照らす月の存在は、どんなものだったのか。
生活に欠かせないものだった一面、また満ち欠けを人生に重ねる心情などを歌に即して考えてみる。

     (万葉集他より数首を紹介。当日プリントで配布)


2) 石垣島と星
 私が移り住んだ沖縄・石垣島は「星の島」ともいえる。北緯24度という位置にあるため、北緯36度にある東京と比べると、圧倒的にたくさんの星を見ることができるからだ。
 南十字星が見えることは有名だが、そのほかの星は?
 石垣島で行われる星に関連したイベントって?
 天文ファンにとって石垣島が要チェックの島、ってどうして?
 一方、石垣島を含む八重山地方に伝わる古文書のなかには、星の動きが農耕に役立てられていたことを示す貴重な史料もある。その史料とはどんなものか。
 住んでみて初めて知った天文関係の情報を、多岐にわたって紹介する。


3) 現代短歌はどう宇宙を詠んでいるか
 知識をそのまま詠んでも、ただ事実を詠み込んだ、つまらない歌にしかならない。けれども、歌人たちはそこに固有の感情やイメージを加えることで、新しい世界を生み出そうとしている。
 科学的知識や情報が増えれば、ロマンが失われ、抒情が削がれてしまうと思うかもしれないが、そんなことは決してない。今も昔も人々は、さまざまな天文現象に心を寄せてきたことを紹介する。

     (現代短歌数首を紹介。プリント配布)



[参考](中嶋記)
*右上カットは、松村先生の著書『夜空をみあげよう』の表紙。出版社、福音館書店のページ
 より引用。   (写真をクリックすると拡大します)
*松村先生の著書についての、アマゾンの紹介ページ
10月25日、毎日新聞のニュース  [宮崎県は25日、同県出身の歌人若山牧水にちなんで優れた短歌作品の作者に贈る「第24回若山牧水賞」にいずれも歌人の松村由利子さん(59)と黒岩剛仁さん(60)を選んだと発表] 。