2020年2月15日 第647回 月例天文講座 

人類の宇宙観の変遷

 一橋大学 名誉教授 中嶋浩一


 「人類の宇宙観の歴史」については、放送大学の講義に基づいて出版された『宇宙観5000年史 ― 人類は宇宙をどうみてきたか』(中村 士, 岡村 定矩 著、東大出版会)、あるいは 『人は宇宙をどのように考えてきたか ― 神話から加速膨張宇宙にいたる宇宙論の物語』(Helge G. Kragh, 竹内 努 他訳、共立出版)などの好著があります。これを見ると、人類はいかにして現在の「138億年のビッグバン宇宙論」に到達したかがわかると同時にまた、紀元前のギリシャなどでいかに高度な宇宙論があったか、ということもわかり、宇宙論の発展の歴史の複雑さも印象づけられます。

 本講座では、これらをどのように理解したらよいかということについて、少々強引な考察を試みたいと思います。

 最初にまず、歴史の流れをかなり単純化したパターンで記述し、その流れの特徴を描き出すことを試みます。いわば歴史の「通説」に当たるものをまず提示します。

 次に、歴史をいろいろ調べてゆくと、そのような通説に当てはまらない事例がいろいろ発見され、それまでの通説がぐらついてくるということが起こります。そしてそれと同時に、より複雑な歴史の構造が見えてくることになります。講座で説明しますが、たとえば地動説への「コペルニクス的転回」で宇宙観が大きく「進歩」した、とされていますが、必ずしもそうではないという見方もできる、というようなことです。

 このように通説を覆すような事例が出てきたとき、私たちは歴史をどのように理解したらよいか、ということが問題になります。これについては、結論的なことは言えないまでも講座の中で少し考察してみたいと思います。

 最後に、何らかの形で歴史の流れが理解されたとしてそこから何がわかるのか、あるいはどのような教訓が得られるのか、が問題となります。これについては、前述の両参考書とも、巻末の一章にとても良い考察がなされているので、それを紹介します。





[参考]
*右上カットは、古代インドの哲学的宇宙観「須弥山」宇宙 (飛不動尊のページより)
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