2020年10月17日 第649回 月例天文講座  

オズマ計画から60年
  -地球外文明探査の軌跡-

  JAXA 宇宙科学研究所 名誉教授 平林 久 先生


1.電波探査の始まり
 1959年、ココーニとモリソンは、電波による地球外文明探査(SETI)の可能性を論じた。1960年、ドレークは電波望遠鏡によって太陽型の2星について信号検出を試みた。(オズマ計画) 今年はオズマ計画から60周年にあたる。

2.ビュラカン会議
 米ソの科学者がアルメニアのビュラカン天文台で多数で広い陣容のもとに地球外文明探査について研究会をひらいた。1971年の1週間にわたる会合で、さまざまなトピックが論じられた。
 日本ではこれに先立つ1969年、壽岳.森本の呼びかけで小研究会が開かれた。

3.CETIの会
 横尾の呼びかけで、地球外文明にいたる様々な話題を肴に、学際的な会合が続いた。(CETIの会) 以下に紹介する奇抜なアイディアは、CETIの会がもっとも盛んな頃のものである。 

4.暗黒星雲とフォルムアルデヒドの吸収線
 暗黒星雲中のフォルムアルデヒド分子が宇宙背景放射にたいして4830MHHzのスペクトル吸収線を示すことが発見された。すると、暗黒星雲方向で、また周波数4830MHzでも、通信雑音がもっとも減り、2重に有利であることになる。このおどろくべき観測にもとづくアイディアが、森本.平林.壽岳により、論文化された。

5.DNAに知的信号はふくまれるか?
 DNAのディジタルが情報のなかに知的信号が隠されていないかという問題をたて、DNAの全解読された大腸菌ファージで解析を試みた独創論文が、横尾.大島によって発表された。

6.進化する電波望遠鏡
 オズマ計画以降、様々な電波望遠鏡が様々な方向と周波数について探査をおこなってきているが、知的信号検出に成功していない。
 一方では電波望遠鏡の能力が目覚ましい進歩を遂げている。前段の高感度、広帯域性、後段の像合成性能、スペクトル処理性能などによる。
 SKA-1 (Square Kilometer Array-1) は大規模な国際協力プロジェクトとして今年から建設が始まった。さらに未定のSKA-2, ng VLA (Very Large Array)が実現すると、SETI性能が大幅に向上して、2030年代には驚くべき発見があるかもしれない。

7.信号のかたち、FRBなど
 宇宙からの信号には固定観念をもたない方がいいだろう。パルサーはパルスを発射していて、本体は中性子星だった。最近とらえられているFRB(Fast Radio Burst)は銀河系外からの短い一発パルスで、中性子星の合体に伴うものらしい。一般に、予断を許さず、宇宙を地道に理解していくことが大事だ。

8.文明の永続性
 太陽系外の惑星がたくさん見つかっている。いずれ地球によく似た惑星がみつかるだろう。地上、宇宙での大望遠鏡時代がきても、そこに生命が生まれ、文明に至る可能性はわからない。もっとも不確定性のある「文明の長さ」もわからない。

 地球文明はさまざまな危険要素を宿している。永続する文明つくりにむかっていこう。



[参考] (中嶋記)
*右上図は、オズマ計画で使用された、グリーンバンクの26m電波望遠鏡。(Wikipedia より。)
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*(平林先生の)付録