2022年2月19日 第671回 月例天文講座 

VERAが作った銀河系地図

     国立天文台教授    本間 希樹
      (右図は国立天文台ニュースページ より、クリックで拡大)

 国立天文台の水沢VLBI観測所が運用している観測ネットワークVERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry)は、天の川銀河の地図作りを行っている電波望遠鏡です。VERAは4つの観測局からなる電波干渉計で、直径20m電波望遠鏡が水沢(岩手県奥州市)、入来(鹿児島県薩摩川内市)、小笠原(東京都小笠原村)、石垣島(沖縄県石垣市)に配置されています。これら4台の望遠鏡で電波を出す天体を同時に観測し、そのデータを掛け合わせると、直径2000kmの巨大な電波望遠鏡を合成することができます。このような観測手法をVLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉計)といい、あらゆる望遠鏡の中でもっとも高い視力を達成することができます。この手法のおかげでVERAの視力は人間の視力検査の単位で「10万」という高いものになり、この視力を使って星の距離と運動を三角測量の原理を用いて測定することが可能になります。

 VERAの建設が始まったのは2000年のことで、4台の望遠鏡が完成して観測を始めたのは2002年です。その後2007年に最初の測量成果が得られ、それ以降これまで約15年に渡って定常的に観測を続けてきました。これまでに100個以上の電波天体について精密な距離と運動の測定に成功しています。そして、2020年にはこれまでの測量成果をまとめたカタログ論文が出版されており、天の川銀河の基本定数や渦巻構造、回転曲線などが測定されています。

 今回の講演では、そもそもなぜ岩手・水沢の地に天文台ができ、どのような経緯を経て国立天文台水沢でVERAを建設して運用することになったのか、歴史的な背景の説明をまず説明したいと思います。そして、15年に渡るVERAの観測によって進められてきた天の川の地図作りの現状と成果についても紹介し、現在までに明らかになってきた天の川銀河の基本的な構造について解説します。そして、最後に今後の研究の展開についても紹介したいと思います。



参考
国立天文台、ニュースページ(2020年)
水沢LBI観測所
本間先生ホームページ