2024年3月16日 第696回 月例天文講座  

太陽活動の気候/気象への影響 
 ~数十日スケールから千年スケールまで

 武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程研究室 教授
                  宮原ひろ子   


           (右図は出版社のページより。クリックで拡大。)

 太陽活動には数十日から数千年にわたる様々な周期での変動が見られます。太陽の直接観測は1611年頃よりガリレオらによって開始され、今では約400年分の観測データの蓄積がありますが、太陽のより長い歴史については、樹木や氷床などの1年ごとの層に含まれる同位体の分析から辿る必要があります。そうした分析から、例えば14世紀から19世紀初頭にかけて、太陽活動が極端に低下する出来事が連続して起こっていたことや、それ以前の中世の時代には太陽活動がとても活発であったことなどが分かってきています。
        
 近年、地球の気候がそういった太陽活動の変動の影響を受けている可能性があることが分かってきました。例えば、太陽活動が低下した時代には、地球が小氷期と呼ばれる寒冷な時代を迎え、気温の低下や降水量の変化などが起こっていたことが分かってきています。加えて、数十日スケールといった比較的短い時間スケールでも太陽が地球に影響を及ぼしている可能性があることが最近になって分かってきました。例えば、日本の雷活動のリズムから、太陽の約1か月ほどの周期の影響が見つかってきています。

 しかしながら、太陽活動が変動しても太陽が放つ光の量はほとんど変化しません。太陽が地球に影響するメカニズムは、まだ多くの謎に包まれています。この講演では、太陽の磁場が宇宙から地球に届く放射線の量を変え、それによって地球の気候や気象のリズムを左右しているという説について、これまでに分かってきていることを解説していきます。



参考資料  (中嶋記)
宮原先生ホームページ
* 著書『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』 出版社紹介ページ
* 著書『太陽ってどんな星?』 出版社紹介ページ