金星の見え方と,金星の太陽面通過(中嶋)

 金星は,今年の夏の観望会の時期には,太陽の向こう側すなわちほぼ「外合」に近い
ので,残念ながら観望はできない(外合は8月16日).しかし来年6月6日早朝〜昼にかけ
て金星の太陽面通過という現象もあり,また8月14日未明には金星食もあるので,この機
会に金星の軌道の様子と見え方をおさらいしておきたい.
 金星の軌道の大きさは地球軌道の約0.72倍,公転周期は224.7日で,地球からの見え方
が同じになる周期,すなわち「会合周期」は約584日すなわち1年と7か月余り,となる.
この数値で計算すると,365.2422×8 = 2921.9376 = 583.92×5.0040 となって,8年
ごとに太陽地球金星位置関係がほぼ同じとなることがわかる.前回の金星太陽面通過は
2004年6月8日であったので,2012年に再び見られる,というわけである.
 また,軌道面は地球軌道面に対し約3.4度傾いているが,金星軌道が地球軌道面と交わ
る位置,すなわち「昇(降)交点黄経」は約77度(257度)なので,春分の日から約77日後の
6月7日前後で太陽面通過が起こるわけである.
 来年の太陽面通過の観望を逃した場合,その次は130年後ということであるが,これの
計算は,地球の歳差で黄道座標が変わるなどの影響もあるので,計算は複雑になる.
 一方,金星の一般的な見え方,すなわち明けの明星・宵の明星および満ち欠けなどは,
文部科学省の新学習指導要領中学校理科においても,「『太陽系の構造』における惑星
の見え方については,金星を取り上げ,その満ち欠けと見かけの大きさを扱うこと。」
となっており,たいへん重要な科学知識の一つとなっている.講演では,子どもたちへ
のこれの指導方法の考察などを含めて解説したい.