「天文計算入門」ー どんなことをするのか,何が問題か.
○はじめに
→ 今回は,天文計算の第一人者の相馬さんをお迎えして,最も良いタイミングで,日食
関係の観測と計算のお話を伺うことになりました.そこでまず「天文計算」について,
その概略と話題を最初にまとめてみたいと思います.
→ 相馬さんの活躍例:坂尾さんの講演より相馬さんの計算例
他の計算例
天文年鑑の計算(日食と月食,星食,接食,秤動,土星の衛星,衛星と環,時)
○天文学における計算の歴史と話題
*暦計算
→ 最初の天文計算は「暦計算」である.
暦計算とは:→ カレンダーを作ること(今日は1年の中のどのへんの日か?)
→ 初めは日の出や自然の観察から日にちを決めたが,日月の運行の規則性がわかってくる
にしたがって,計算で予報するようになった.(中国の戦国時代ころから)
→ 暦計算に出てくる「メトン周期」などは,相馬さんのお話にて.
*ピタゴラスの数学
→ ピタゴラスは,エジプトに留学して,ピラミットの建設などで発達したエジプトの
数学を勉強してきた.彼は「数の世界の規則性,数の調和」を追求し,「宇宙の数学
的調和」を考えた.そのような考えから,「大地は球である」と説いた.(天文計算
は特にはやってないようである.)
→ 計算を行なって,月や太陽までの距離を求めたのはアリスタルコス,また地球の大き
さを求めたのはエラトステネス,である.→「測地学」にて再び.
*プトレマイオスの天動説の計算と,コペルニクスの地動説の計算
→ 惑星の運動の計算は,プラトンの「たまねぎ構造の天球」のモデルが最初.
→ これを改良して,27個の天球の運動の組み合わせとして表現したのがエウドクソス.
→ 56個の天球の運動の組み合わせとして表現(すなわち計算)したアリストテレス.
→ たなめぎ構造ではなくて「周天円」と「搬送円」で表したのがプトレマイオス.
→ 他に「離心円」など,複雑な構造をいろいろ考えているので,結果的には
かなり正確に惑星運動を記述できた.
→ コペルニクスは,円軌道による地動説をとなえたが,もともと惑星は円軌道ではない
ので,計算は正確ではなかった.
*ケプラーの計算
→ チコ・ブラーヘの精密な惑星観測のおかげで,ケプラーは惑星の楕円軌道を発見した.
→ 楕円軌道で初めて地動説が精密になった.
*ニュートンの計算
→ ニュートン力学の計算法と,万有引力の考え方という2つの簡単なプリンシプルから,
すべての天体の運動が精密に計算できるようになった.
→ 現在でもこの方法で惑星運動を計算する.→ 数値計算.
*海王星の発見の計算
→ 天王星の軌道のズレは未知の惑星からの万有引力によるものとして,アダムスとルベ
リエが,ニュートン力学によって未知の惑星の軌道を計算,計算位置に「海王星」が
発見される. → ニュートン力学の計算の正しさが証明される.
*月運動の計算
→ 月の運動は,影響する要素が多く,ニュートン力学を用いても計算は大変困難.
→ 結局,ブラウンが,2000項近い三角関数の合成として表現.(天動説と同様)
→ 国立天文台,福島教授の講義ノート より,関連部分をキャッシュ.ppt
→ ブラウンの「大経験項」から,地球自転変動へ.→ 「自転変動」の講演で説明.
→ 月運動理論の観測的検証 → 「えんぺい観測」の講演で説明.
○現代の天文学における計算
*昔ながらの計算
→ 天体の運動をできるだけ精密に計算し,日食・月食などの予報をする.
→ 相馬さんの計算は,これが中心.
→ 次項で,IAUで取り決めた章動計算の実例を紹介.
*数値シミュレーションの計算
→ スーパーコンピュータを使用して,膨大な計算を実行.
→ 国立天文台4次元ディジタル宇宙プロジェクト "4D2U"
→ 動画サンプル,ダウンロードと解説(銀河の渦巻き)
→ 単一目的スーパーコンピュータを作ってしまうプロジェクトもある.
→ GRAPE-DR プロジェクト
*可視化のための計算
→ シミュレーションで計算したデータを,目に見える形で表現するための計算.
→ 上記 4D2U 参照
*ビッグデータ計算
→ 仮想天文台プロジェクト
→ 近年話題の「ビッグデータ」や「クラウド」の考え方は,天文学界ではすでに10年も
前から取り組みが行われている.
○現代の暦計算の実例
*国際天文学連合の標準計算法の例 → IAU SOFA
→ 章動計算プログラム