恒星内部構造の時間的変化 ー 星の一生 


○はじめに
 星は「宇宙の中の,万有引力で集まったガス(気体)のかたまり」ということが
わかれば,次に「星は宇宙の中の大規模なガスの雲(星雲)の中から生まれる」と
いうことが推測される.そこでこのような考え方に沿って物理学の方程式を組み立
て,さらにそれを計算することによって,星の生い立ちから消滅までのストーリー,
すなわち「星の一生の理論」を作ることができる.

○星の形成
 宇宙に漂う「星雲」のガスからある程度まとまったガスのかたまりが形成される
までは,万有引力による物質の集中の方程式を計算することによって描くことがで
きる.しかし実際に計算してみると,実際に集中するまでに莫大な時間がかかるな
ど,いろいろ不都合なことが多いことがわかる.これらの困難は,いろいろな新し
い物理学,新しい方程式を導入しつつ解決してゆく.結果的には,これらはかなり
解明されていると考えられる.この点を講座で説明する.

○星の安定性
 「時間的変化」を考える際に重要になることの一つに「安定性」がある.前講座
で,「万有引力と熱による膨張力が釣り合っている」のが恒星だとしたが,計算上
は釣り合っていても,少しの変化で釣り合いが崩れてしまうようでは長く輝く恒星
にならない.このような性質を「安定性」というが,これは時間的変化の方程式を
計算しなければわからない.
 この点,万有引力による収縮力と,核反応エネルギーによる膨張力で釣り合って
いるガス体は,たいへん安定であることが計算でわかる.
 
○燃料の消費と新たな物理学
 これまでの「内部構造理論」は,万有引力と水素の核融合反応によるエネルギー
の発生,およびその膨張力との釣り合いで考えてきたが,水素が消費し尽くされて
しまえば,また別の物理学を考えねばならない.具体的には次のようになる:
 ・水素が反応してできたヘリウムのガス体と,それを取り巻く残存水素のガス体
  の2重構造の物理.
 ・ヘリウムの核反応の物理.
 ・ガス体としての収縮がどこまで続くかという,高密度物体の物理.
 これらの物理学によって,恒星は水素を消費した後は急膨張して「赤色巨星」に
なり,また中心部は収縮が止まって「白色矮星」ができるということがわかる.

○新たな状況での安定性
 ヘリウムの核反応など,新たな状況では安定性もだんだん難しくなる.具体的に
は,ヘリウムの核反応の次の(炭素や酸素などの元素の)核反応ではもはや安定性
が成り立たず,星内部では崩落と爆発が同時に起こる.これが超新星爆発である.