国立天文台 太陽観測所

更新情報 : 2016年6月の太陽活動を公開しました (2016.6.7)

更新情報 : 国立天文台ニュース 2016年3月号 特集:太陽観測所-世紀を超えて-
     特別付録ポスター(PDF, 21MB,3.6MB)(2016.4.7)

国立天文台 太陽観測所

最新画像

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黒点望遠鏡 & その他の望遠鏡 全面観測

白色光 全面像

白色光 全面像

Na D線 全面像

Na D線 全面像

Hα線 全面像

Hα線 全面像

今月の太陽:白色光 Hα線

太陽フレア望遠鏡 Hα線観測

Ha fulldisk

Hα線 全面像

Ha050 fulldisk

Hα線±0.5Å 全面像

Ha080 fulldisk

Hα線±0.8Å 全面像

Ha+3.5 Cont

Hα線+3.5Å 全面像

Ha050 Doppler

Hα線±0.5Å 速度場像

Ha080 Doppler

Hα線±0.8Å 速度場像

Hα線 リアルタイム画像

今月の太陽:Hα線

太陽フレア望遠鏡 赤外線偏光観測

He 10830I

He 10830Å 全面像

He 10830V

He 10830Å 円偏光像

Si 10827V

Si 10827Å 円偏光像

Fe 15648V

Fe 15648Å 円偏光像

今月の太陽:赤外線偏光

国立天文台 太陽観測所

2016年6月の太陽活動 バックナンバー

solar cycle

 黒点相対数の変動(13カ月移動平均)。緑線は最近1周期における変動、青線と赤線は最近1周期における北半球(青)と南半球(赤)の変動、点線(黒)は過去の周期における変動を極小を揃えてプロットしたもの。前太陽活動サイクルから今サイクルにかけて極小が深くまた遅れました。現在の太陽活動は極大期を過ぎたところとなっています。ここ半世紀にわたって北半球の活動が南半球より1年から3年先行する傾向が続いており、前サイクルでは北半球は2000年初めに極大となった一方、南半球では2002年初頭が極大で、またその後の極小も北半球が2008年初め、南半球が2009年前半でした。今サイクルでは北半球が2011年後半に極大を迎えたのに対して、南半球は遅れて上昇し、2014年に極大を迎えるという、全く従来と変わらない傾向が見られます。
→ 2016年の黒点相対数

5月の太陽:白色光 Hα線 赤外線偏光

 6月の平均黒点相対数は19.60でした。南北半球別では、北半球が 11.80、南半球が7.80 でした。南北半球共に、先月の半分以下の黒点相対数となりました。日毎で見ると、太陽観測所の6月の観測日数は15日間でしたが、このうち4日間が無黒点でした。太陽観測所の観測では、2014年7月17日以来の無黒点です。2014年7月より前の無黒点の観測は2011年8月15日でした。

 図1.a,図1.b は、それぞれ、2016年6月3日のほぼ同時刻に撮像された、太陽全面白色光像 (太陽光球像)、及び、太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像)です。太陽光球では黒点が一つもなくのっぺらとしていますが、この場合でも、その上空の彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造があるのが見て取れます。

 6月のフレアの発生数は、米国 NOAA GOES 衛星(※1, ※2)の観測結果によると、X線強度別に、Cクラスが6回、Mクラスが0回、Xクラスが0回でした。Cクラス以上のフレアの総数が、今太陽活動周期のピーク以後初めて1桁を記録しました。黒点相対数とフレアの発生数が共にこのレベルまで低かったのは、2010年12月以来です。今サイクルの太陽活動が、2008~2009年の極小・2014年の極大の後、急速に次の極小へと向かっていることがわかります。

 最後に、太陽観測所フレア望遠鏡Hα観測装置が6月に捉えた活動イベントを紹介します。図2は、6月27日に太陽の東の縁の上空で発生したプロミネンス噴出です(ムービー)。図上、上が北、左が太陽の東に対応します。北から南へと噴出したプロミネンスが、回転するような運動を示しながら上昇を始めるのが見て取れます。このイベントは6月に観測できた唯一のダイナミカルな活動現象となりました。
※1 NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気局。この機関によって、活動領域に番号が振られる。)
※2 GOES: Geostationary Operational Enviromental Satellite(米国の観測衛星)

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図1.a(左): 2016年6月3日 三鷹新黒点望遠鏡 太陽全面白色光像 (太陽光球像): この日は無黒点であった。
図1.b(右): 図1.a とほぼ同時刻の 三鷹太陽フレア望遠鏡 太陽全面Hα中心波長像 (太陽彩層像):太陽光球面で無黒点でも、太陽彩層では、プラージュ、フィラメント、プロミネンスといった構造が見える。

fig_ha20160627_0427fe.png

図2: 2016年6月27日に太陽の東の縁上空で発生したプロミネンス噴出(画像ムービー): 三鷹太陽フレア望遠鏡 Hα線中心波長狭帯域フィルター像 (FWHM 0.25 Å)

国立天文台 太陽観測所

トピックス バックナンバー

巨大黒点の出現と、「ひので」がとらえた磁場構造

国立天文台 ひので科学プロジェクト
太陽観測所
宇宙航空研究開発機構

  2014年10月下旬、太陽に巨大黒点が出現しました。10月25日に開催されていた国立天文台「三鷹・星と宇宙の日」会場では、来場者の皆様と巨大黒点の話で大変盛り上がりました。この黒点は10月16日に端から現れ、発達しながら自転によって移動し、30日まで見えていました(図1、図2(a)参照)。黒点群全体の面積は10月26日に地球約66個分(※1)となり、これは今の活動周期最大であるとともに、約24年ぶり(1990年11月18日以来)の大きさでもあります。その後11月になって太陽の自転によって再び姿を現しました(図2(b))。

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図1 国立天文台太陽観測所のフレア望遠鏡が取得した2014年10月18日から28日の連続光全面像(抜粋、大黒点群の部分のみを重ねたもの)。

SFT20141024.png

図2(a) 2014年10月24日に取得した国立天文台太陽観測所の太陽フレア望遠鏡による連続光画像。

SFT20141115.png

図2(b) 2014年11月15日に取得した国立天文台太陽観測所の太陽フレア望遠鏡による連続光画像。

 図3と図4はそれぞれ、10月24日と11月15日に太陽観測衛星「ひので」が捉えたこの巨大黒点です。そして(a)の画像は、私達の目で見える光で見た画像、(b)の画像は磁場の画像で、N極を白、S極を黒で表しています。

sp_ic_20141024_h07

図3(a) 10月24日の連続光画像
(横:約20万km × 縦:約12万km)

sp_ic_20141115_h16

図4(a) 11月15日の連続光画像
(横:約12万km × 縦:約12万km)

sp_bl_20141024_h07.png

図3(b) 10月24日の磁場分布画像
(横:約20万km × 縦:約12万km

sp_bl_20141115_h16

図4(b) 11月15日の磁場分布画像
(横:約12万km × 縦:約12万km)

 黒点は周りよりも温度が低いために黒く見えています。温度が低いのは、黒点で磁場が強いために、太陽中心部の熱が伝わりにくいことが原因です。そして、この磁場が、「フレア」と呼ばれる太陽大気中で起こる爆発の原因と考えられています。フレアの発生メカニズムを理解するため、「ひので」は太陽表面の磁場や時間変動を精密に測定しています。
 10月下旬、11月中旬とも、右側の黒点(先行黒点)がN極、左側の黒点(後行黒点)がS極です。11月の画像では、先行黒点の左端がS極、後行黒点の左端がN極に見えます。これはまだ黒点が太陽の端にあり、斜めから観測しているための見かけ上のものです。
 10月下旬の磁場の画像ではN極とS極が入り組んでいます。これはフレアを起こしやすい構造です。実際、10月下旬は巨大フレアが6回起こりました。11月15日・16日には中規模クラスのフレアが起こったものの、磁場の構造は10月ほど複雑ではないように見えます。今後、はたしてフレアは起こるのでしょうか。今後も注意深く観測を継続します。

 また、地球への影響はどうでしょうか。フレアが起こると、電気を帯びた粒子が地球にまで飛んできて、磁気嵐が起こる場合があります。10月下旬は多くのフレアが起こりましたが、地球への影響はあまりありませんでした。この理由は研究の対象で、まだ推測の域を出ません。一説には、黒点上空の磁場が強いためにプラズマの噴出を押さえ込んでしまったのではないかと考えられています。11月中、10月下旬ほど多くのフレアが起こらなかったとしても、上空の磁場が衰退して地球に影響を及ぼすフレアが起こる可能性はあります。今後の推移に注目が必要です。

2014年11月19日更新


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