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 2017年7月23日(日) 〜 25日(火) 北軽井沢駿台夏季講座

算額と宇宙 

      国立天文台名誉教授  木下 宙
      東洋大学名誉教授   米山忠興
       一橋大学名誉教授   中嶋浩一



第1講:  天文と和算 — 『天地明察』から   (中嶋)
 日本オリジナルの数学「和算」は、鎖国の江戸時代にあって独自かつ特異な 発展を遂げました。そしてこれが、天文学にも深く関わっているというのが、 『天地明察』のテーマでもあります。今回の夏季講座では、これをメインテー マとして取り上げてみました。
 和算は、皆がいろいろな数学(算術)の問題を出し、他の人々がそれにチャ レンジして算術の腕を競い合う、というようにして発展してきました。ちょう ど剣術などと同じように「道場」もあったようです。そして、その算術問題は 今でいう幾何学的な図形の問題が多く、それはまた見た目にも形の美しいもの がたくさんありました。人々はその美しい図形の問題を清書して額に飾り、ま たその額を神社に奉納したりしました。これを「算額」と言います。
 数学の先生方のみならず天文学の先生方も算額に興味を持たれる先生が多く おられます。今回の夏季講座では、そのような天文の先生として木下宙、米山 忠興の両先生をお招きし、お話を伺うことになりました。
 美しい図形の算額の魅力は、宇宙の魅力に通じるものがあるのではないかと 思われます。このような観点からも、算額と宇宙のつながりについても考えて みたいと思います。
 『天地明察』は、江戸時代初期、「暦(こよみ)」について研究しまた改良 (改暦)を行った渋川春海(別名、安井算哲、保井算哲)という人のドラマで す。そして物語の中に、同時代の著名な和算家の関孝和という人が出て来て、 渋川春海に改暦の計算の上で多大な影響を与えた、ということになっています。
 『天地明察』は映画も作られているので、本講ではこれを取り上げて当時の 和算の世界の雰囲気を見てみたいと思います。そしてまた和算が、改暦の天文 計算とどのように関わったかを考えてみたいと思います。
 本講座第2講〜第6講で木下・米山両先生に和算・算額についてのお話をたっ ぷりと伺った後、最後の第6講で算額と宇宙のそれぞれの魅力、あるいはその つながりについて考えてみたいと思います。

中嶋講演記録1

第2講: 易しい数学  (米山)
 受講生の皆さんの中には、数学が苦手だと思っておられる方も多いと思いますが、 私自身も昔は、嫌いではなかったけれど、幾何や代数の問題がなかなか出来ずに苦労した ものでした。しかし、ここにあるパズルのような「数学」から順になれていくと、そのあ とは案外うまくいくことも多いので、がんばって挑戦してみて下さい。
 日常でも使える掛け算の速算法、数学パズル、図形、折り紙、コピー用紙のサイズにつ いてなど、分かりやすく解説します。

米山先生,問題編, 同,解答編


第3講: 映画「天地明察」鑑賞 (解説,中嶋)

単行本『天地明察』,第1問,解法(木下,pdfファイル)


第4講: 全国算額巡り  (木下)
 神社仏閣の拝殿に絵馬が奉納・掲額されている。数学の問題が記載されている絵馬が 算額である。
 江戸中期以降に当時の知識階級である武士ばかりでなく町民、農民まで 機会あるごとに算額を奉納し、和算の発展に寄与した。全国に現存している算額の なかから、特色ある算額を紹介する。

木下先生,配布資料(pdfファイル)


第5講: 美しい和算幾何  (米山)
 江戸~明治初期の日本の数学は、当時は「算法」、「算術」と呼ばれていました。 のちに西洋数学と区別するために「和算」と呼んでいます。
 和算は、1600年代後半から明治初期までおよそ200年の短期間に急速に発展し、 西洋数学をはるかに凌駕した分野が幾つもありました。
 それらの中でも、和算独自の美しく優れた幾何の解法をいくつか紹介します。

米山先生,問題編, 同,解答編


第6講:  和算における微分と積分 (木下)
 江戸時代、日本の数学は鎖国によってヨーロッパの自然科学の発展から 切り離されていたが、日本独自の数学(和算)が高度に発展していた。
 この時代の和算における微分・積分などに関連することついて話す。

木下先生,配布資料(pdfファイル)


第7講:  ディスカッション、算額の魅力と宇宙の魅力  (全員参加)
 算額の(問題の)魅力は、たとえば図形の調和の美しさ、また複雑に見える 難問をスッキリと解決する解答の美しさ、などにあるかと思います。そしてこ れは宇宙のいろいろな現象の中に、共通するものがあるのではないか、と考え られます。
 いくつかの具体例を挙げて、皆さんでディスカッションしてみたいと思いま す。

ディスカッション資料

 ディスカッションでは「旧暦」の話題も出され,米山先生から「六曜」と月齢の関係などの 解説もありました.これについては,また回を改めて詳しくお聞きしたいと思います.

 ケプラーの惑星観について,惑星を音楽で表す方法の資料を,瀧島さんから送っていただきました.
   → 図は こちら  出典
     

[参考](中嶋記)
*右上カットは,「和算の館」のページより