宇宙はなぜ始まったか、始まり以前はどうだったか (2010 Dec. 15)


[基礎知識の復習] *量子力学(量子論)   → 相対論と双璧をなす20世紀の物理学。19世紀の物理学的世界観をガラリと塗り替えた。   → 相対論は(宇宙などの)マクロの世界の理論であるのに対し、量子論は(電子などの)ミクロの    世界を記述する理論である。   → ミクロの世界では、物質は「波動」の性質を示す。逆に、光のような波動現象が「粒子」の性質    を示す。(波動性と粒子性)   → 電子の状態を記述する、シュレディンガーの「波動方程式」で量子力学が数量的理論になった。   *量子力学における「不確定性原理」と「トンネル効果」  ・不確定性原理   → ミクロの世界では、物質の状態(存在位置、運動など)は原理的に不確定である。     → 電子などは、小さな粒子ではなく雲のように広がった存在となる。→ 電子の波動性。     → 物質の状態の時間変化なども、確率的にしか予言できない。→ 未来は不定。 → 不確定の程度 = h (プランク定数) = 6.6 × 10-34 ジュール・秒  ・現代の「ゼロの不確定」の考え方   → 電子・光などの物質・現象のみが不確定なのではなく、「非存在」も不確定である。   → 完全な「無」の状態でも、ある確率で物質が存在する。    → エネルギーを寸借して粒子・反粒子を生成し、瞬時の後に合体してエネルギーを返済する。     ※ ホーキングの「ブラックホールの蒸発」の理論にも関係する。  ※ アインシュタインは不確定性原理に反対だった。  ・トンネル効果   → 不確定性原理の一つの現れ。   → 電子などの「存在」が不確定であるために、存在場所に確率的な広がりがあり、そのため     壁(バリア)などがあっても壁の向こう側にもわずかな確率ではあるが電子が存在する。   → 壁の向こうの存在確率が実現すると、物質は壁を通り抜けたことになる。→「トンネル効果」   → 電子のようなミクロの世界ではあたりまえに実現しており、江崎レオナの「トンネルダイ     オード」として実用化されている。
◎始まり以前の理論 ○始まり以前  → 始まり以前は何もなかった、物質やエネルギーのみでなく、それを容れる「空間」も。   (今は宇宙の「空間」そのものが膨張しているのだから、始まりの瞬間には微小な「空間」    しかなかった。したがって、始まり以前は空間自体もなかった。)   (3次元の空間がその中で膨張を始めた4次元の空間というのが始めから存在していたと    考えると、理論が発散してしまうので、そこは考えないようにする。あるいは、それも    存在しなかったと考える。)  → 空間がなければ「時間」もなかった。時間がなかったので「以前」というのもなかった! ○不確定な「無」と、そのバリア  → ゼロの不確定性の原理で、10^-44 秒程度の間「時空」が存在し、そして消滅する、という    のを繰り返していた。  → 存在した時空は、バリアを越えずに「無」に戻るが、バリアの向こうには「エネルギーの    低い真空」がある。(→ 図) ○トンネル効果により宇宙が発生  → トンネル効果により、真空のエネルギーのバリアを通り抜けた時空があった。  → 「真空のエネルギー」により膨張が始まり、また物質の元になるエネルギーも発生した。    = 宇宙のインフレーション  ※ 始まり以前には何もなかったが、不確定性原理、真空のエネルギーなど、「物理法則」は存在    していたことになる。   → 新約聖書、ヨハネによる福音書、冒頭   「はじめにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。・・・・    すべてものはこのことばからできた。・・・・」   「ことば」は、ギリシャ語の原典では「Λογοσ」「Logos」「ロゴス」で、ロジックなど    ということばの語源。  ※ 儒教にも同じような考え方がある。   → 朱子、「未ダ天地アラザルノ前、畢竟、先ズコノ理アリ。コノ理アリテ後ニコノ気ヲ生ズ。」    「気」は、ちょうどエネルギーのように、万物が生成する元になるもの、「理」は、ちょうど    物理法則のように、万物の存在をあるべきようにあらしめているもの、とされる。