2021年7月10日 七夕星を語る会  

小惑星探査機「はやぶさ2」
   の挑戦とその成果

  JAXA はやぶさ2プロジェクト
  ミッションマネージャ  吉川 真 先生

 小惑星探査機「はやぶさ2」は、「はやぶさ」に続いて世界で2番目の小惑星サンプルリターンを行った探査機です。サンプルリターンとは、天体まで行ってそこにある物質を採取して地球に持ち帰ることを行うミッションのことで、小惑星からのサンプルリターンは世界でも日本だけが「はやぶさ」と「はやぶさ2」で成功しています。「はやぶさ」では多くの深刻なトラブルが発生して、それを乗り越えてミッションが成功しました。非常に感動的になりましたが、技術的には自慢できるものではありません。より確実なミッションを行いたいということで「はやぶさ2」が計画されたのです。また、「はやぶさ2」では、地球の生命の元になった物質を探したり、地球にある水の起源を解明したりするような、科学的にもより進んだ研究を行うことを目指しています。

 「はやぶさ2」は2014年12月3日に打ち上げられ、2018年6月27日に小惑星リュウグウに予定通りに到着しました。リュウグウでは、詳しい観測を行った後で、小型のローバ(探査車)やランダ(着陸機)を小惑星表面に降ろしたり、2回のタッチダウン(着陸)を行ったり、人工クレーターを作ったり、さらにはリュウグウの周りに3つの人工物体を周回させる人工衛星の実験も行いました。これらの運用はすべて成功しました。探査機は、2019年11月13日にリュウグウを出発して、地球へと向かいました。そして、2020年12月6日に、地球にカプセルを帰還させることにも成功しました。カプセルには予定の0.1gを大きく超える約5.4gのサンプルが入っていて、サンプルリターンとしても大成功となりました。そのサンプルの本格的な分析は、2021年の6月から開始されています。

 このように「はやぶさ2」は文句なしの大成功なのですが、実際には想定外の出来事やいろいろな困難がありました。たとえば、小惑星リュウグウは、その形がそろばんの珠そっくりでしたが、これは誰も想像していませんでした。また、その表面はデコボコだらけで、タッチダウン(着陸)にとっては非常に難度が高いものでした。到着してみて初めて分かったリュウグウに対して、プロジェクトメンバーはいろいろな工夫をして、ミッションを成功させたのです。ここでは、「はやぶさ2」で行ったいろいろな挑戦と、これまでどのようなことが分かってきたのかについてお話しします。






[参考] (中嶋記)
*右上図は、JAXA はやぶさ2プロジェクト、ギャラリーページより。