日本天文学会ジュニアセッションの発表

2014年3月22日,国際基督教大学にて

駿台学園高等学校天文部です。
今回は「デジタルカメラによる星の明るさと色の測定」
について発表します。








研究の目的は、特別な機材を用いずにデジタル一眼レフ
カメラを使って、どれくらいの精度で恒星の等級と色指
数を求められるのか考察することです。








観測対象はオリオン座の、α,β,γ,δ,ε,ζ,κ
の7つの恒星です。









観測はこのような機材を使いました。










[観測状況]
場所は東京都北区王子駿台学園高校校舎屋上で観測し
ました。2014年1月16日と27日の夜に1秒露出で撮り27
日には3秒露出でも撮りました。
16日は快晴でしたがオリオン座近くに月があり、27日
にはオリオン座付近に雲がありますたが空全体にかか
ることはありませんでした。




[データ処理]
撮影データjpg画像を画像処理ソフトgimpを用いてC言
語プログラムを用いるためにppm画像に変換し、その後
それを用いてR(赤),G(緑),B(青)の強さを読み取り、
星の位置を特定しました。次に星の位置にあるピクセ
ルの出力を積算し、そこからバックグラド積算値を減算、
最後にエクセルを用いて測定データの検討を行いました。





[α oriの星像]
実際の観測に移ります。これはα oriの星像です。
直径30ピクセル程度のデフォーカスになるように撮り
ました。







[α ori星像の強度分布]
この星像の場合、最大出力値は140くらいですが、限界
出力値の255を超えないようにチェックした上で測定デ
ータを検討しています。







ここからは測定結果です。
これは、1月27日1秒露出で撮影したαオリオンの、
明るさの測定値の時間変化を示したものです。
縦軸の「ピクセル積算値」とは、前の図の明るさの出
力値全てを積算したもので、高いほど明るくなります。
赤い星のαオリオンは、GやBに比べてRの積算値が
高くなっています。




同じ条件で撮影したκオリオンの明るさの時間変化です。
実視等級が2.1なので、さきほどのαオリオン(実視等
級は0.4)に比べて全体的に低くなっています。








ピクセル積算値と等級に換算したバラつきの図です。
1月27日1秒露出で撮影したデータは、ピクセル積算値
の上限が高く、広く分布しています。








同じ日の3秒露出で撮影したもので露出が不足だった
ため上限が低く狭くなっています。









1月16日1秒露出は、上限が高く広く分布しています。










色指数の測定についてです。
色指数B−Vは、青色域での等級から実視等級を引いた
もので、赤い星ほど大きい値を示します。縦軸は、測
定色指数。横軸は、カタログ色指数です。3秒露出で
撮ったα星の測定誤差が大きくなってしまったのには、
F値を絞りすぎてしまったためだと思われます。さきほ
ど見て頂いたピクセル積算値に換算したばらつきのグ
ラフから1秒露出に比べてピクセル積算値が全体的に
低くなってしまったことが原因だと思われます。


次に、測定等級とカタログ等級についてです。
まず、縦軸は、RGBの中で一番実視等級に近いグリーン
の等級を示したものです。横軸は理科年表で調べたカ
タログ実視等級です。そして、傾き1のグラフに近い
ほど精度が良いと言えます。それぞれ撮った星と傾き
1のグラフを比較してみると、1月27日の測定結果よ
り、3秒露出よりも1秒露出の方が精度が良いことが
わかりました。



今回は、1秒露出の観測で、β星に対するα星の色指
数を0.2程度の精度で決定することができました。
デジタルカメラを用いた方法で0.1〜2.2等級の明るさ
の星を測定した結果、0.08〜0.2の標準偏差で等級を
求めることができました。
等級と色指数を求めるにあたり、撮影条件が測定条件
に大きく寄与することが分かりました。

以上で発表を終わります。
ご静聴ありがとうございました。