2024年2月17日 第695回 月例天文講座  

古今東西の哲学者の宇宙観

  一橋大学 名誉教授  中嶋 浩一

 (右図はラファエロ画「アテナイの学堂」
             Wikipedia より)


はじめに
 講演者(中嶋)は、2020年2月の天文講座で「人類の宇宙観の変遷」というテーマを取り上げ、古代の神話的宇宙観から現代の科学・技術的宇宙観までを概観した。その中で「哲学的宇宙観」として、ギリシャ哲学のみでなくインド、中国の哲学の宇宙観も紹介した。今回、これらをもう少し深く掘り下げて考察してみたい。

 前回の話では、同じギリシャ哲学の宇宙観でも「哲学的」なもの、「数量的」なもの、というように分類して考察した。哲学的な宇宙観は深い思索や理念から構築されたものであり、数量的(あるいは「計測的」)宇宙観は現象をありのままに捉えそれをなるべく正確に表現・説明しようとするものである、と規定すれば、天動説であってもアリストテレスやプトレマイオスの宇宙観は惑星の運行を正確に表現できるのでまさに「数量的」である。

 これに対して、宇宙を構成する万物の根源を考察したタレスらのイオニア学派や、数学的な調和や美しさの観点から宇宙論を構成したピタゴラス学派の考えは、思索や理念から構築された宇宙観であり「哲学的」であるといって良い。そして今回は、この「哲学的」な宇宙観に的を絞って考察してみようということである。

 このように考えると、現代の宇宙論でも、観測不可能な4次元宇宙などを考察するものは「哲学的」に分類することができよう。このように考えてタイトルに「古今東西」と銘打ってみた。

紹介する哲学者
 もとより哲学者も宇宙観も数多くあって、とても本講座で俯瞰できるものではない。ここでは特徴的な少数に絞って簡単に紹介し、またそれらの意味・意義を考察してみたい。今回は次の哲学者・天文学者の宇宙観を紹介する:

ソクラテス ー 宇宙観を示さなかった哲学者
 ソクラテスは一切著述を残さなかったので、彼の思想はプラトンなどの後世の人の著作の中での引用・紹介で窺い知ることができるのみである。それによれば、ソクラテスの哲学は プラトン
世親
朱熹
カント
ビレンキン

ソクラテス








参考資料