2024年12月21日 第705回 月例天文講座  

宇宙で最初に生まれた星たち

国立天文台 教授      青木 和光


 ビッグバンで始まった宇宙は、はじめは星も銀河も存在しない世界でした。それから数億年をかけて星が誕生し、やがて多数の星が群れを成す銀河を形成してきました。そして90億年ほど経過した頃に生まれてきた星の一つが私たちの太陽です。この歴史のなかで、最初の星の誕生は、その後の宇宙を変えていく大きな出来事でした。大きな変化のひとつは、水素とヘリウムしかなかった宇宙に、炭素や酸素、鉄などの新たな元素がもたらされたことです。これらをもたらしたのが、太陽よりも10倍以上重い星たちが引き起こす超新星爆発です。天の川銀河やその周辺の小さな銀河の星の元素組成を調べると、これらの初代の超新星爆発の痕跡がみつかります。この研究を通して見えてきた宇宙で最初の星たちの特徴をご紹介します。
 さらに、最近の宇宙の観測により、宇宙で最初の星たちに関係していると思われる問題が次々と見出されています。たとえば、重力波の観測で発見が相次ぐ太陽の数十倍もの重さをもつブラックホールは、初代の星たちが生み出したものである可能性があります。最遠方の銀河の観測で見えてきた宇宙初期の星形成とあわせて、最近の研究をご紹介します。







参考資料 (中嶋記)
*右上図は、アルマ望遠鏡で観測された「132億年前の宇宙に存在した大量の塵 ~宇宙初期の星形成史をさかのぼる~」というタイトルの図。(出典
*右下図は、計画中の「口径30m望遠鏡(TMT)」の完成予想図。(出典は ウィキペディア
  青木先生は、この計画の副プロジェクト長として活躍中です。