2024年10月19日 第703回 月例天文講座  

銀河の輝線強度マッピング観測と機械学習の応用

東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 助教  森脇 可奈


 宇宙空間において、物質や銀河は特徴的な分布の仕方をしていることが知られています。それらのなす構造は宇宙大規模構造と呼ばれ、宇宙の進化を理解する上で非常に重要となります。今後十年以内に実施される天文観測では、様々な大型望遠鏡を用いてかつてない規模のデータが得られ、宇宙や銀河の進化に関して新たな発見が得られると期待されています。私の研究では、こうした観測データの効率的な解析手法について研究しています。

 近年、天文研究においても AI の技術が用いられてきています。我々は、深層学習を用いて膨大な観測データからノイズを除去して大規模構造の様子を明らかにするための研究を進めています。機械の学習にはコンピュータシミュレーションによって得られたデータを用いています。本講演では、こうした研究で用いる深層学習モデルやシミュレーションについて説明したのち、得られた結果を紹介します。また、こうした観測によって宇宙の構成要素や進化、銀河の形成過程についてどのような知見が得られるかについても合わせて述べます。



参考資料 (中嶋記)
*右上図は ㈱ NTTデータ数理システム のページ より。
天文月報、2022年7月号、本講演の解説記事
森脇先生ホームページ
*2dF観測から得られた、宇宙大規模構造(クリックで拡大)(出典は ウィキペディア