2025年1月18日 第706回 月例天文講座  

フランス、ストラスブール天文台の天文データベースサービス  

一橋大学名誉教授 中嶋浩一

*はじめに(お話概要)
 フランス東部、ライン川沿いのアルザスという地方にストラスブールという古都があります。ここに古くから天文台があり、小規模ながら地道に観測研究を行って来ましたが、1900年代末になって天文観測が大型望遠鏡中心の研究になるに従い、天文データを収集公開する「天文データセンター」としての天文研究に力を入れるようになりました。その後のコンピュータやインターネットの発展にともなって着々と実績を積み上げ、いまでは世界の天文データセンターの、文字通り中心となっています。データサービスは SIMBAD, VizieR, Aladin, などの名称で提供され、誰でも利用できます。今回のお話では、これらについて具体的に説明します。


*ストラスブールという街
 「ストラス」はドイツ語で「道」、また「ブール」は「ブルグ」すなわち「城壁に囲まれた街」という意味です。ライン川を使った南北の交通、およびフランスのパリからドイツ南部を東西に貫く街道の交差点として、文字通りストラスブールは「道の街」です。

 また、ドイツ・フランスの国境の地方「アルザス」の首都として、領有がドイツ・フランスと目まぐるしく変わった、という歴史を持つ街です。実際、地名の "Strasbourg"(ドイツ語では "Strassburg")は、ドイツ領の時は「シュトラースブルク」となります。
 現代のストラスブールは、EU の国会議事堂である欧州議会会場が置かれ、またそれに関連した諸機関、および各国の領事館などが置かれています。
  
   街のようすは右図のとおりです。また、街の中心には特徴的なファサードの大聖堂があり、周りを昔ながらの外観(コロンバージュといいます)の家々が取り囲んでいます。




*ストラスブール天文台
  公式ホームページ(ストラスブール大学のページ)

  2つの研究グループ:
    Team GALHECOS 
       Galaxies, High Energy, Cosmology, Compact Objects & Stars
       (天体物理学研究、全般)
    Team CDS 
       Centre de Données astronomiques de Strasbourg
       (天文データセンター)
       → かなり大勢の人がいる。

  CDS のサービス 
    SIMBAD:
          the reference database for nomenclature and bibliography of 
           astronomical objects (outside the solar system).
      (太陽系外の天体の、様々な呼び名や、それぞれについての研究論文の
       データベースサービス)
    VizieR:
          the reference service for astronomical catalogues and tables 
          published in journals.
      (天体カタログや、論文中の天体データ表などの検索サービス)
    Aladin:
          interactive sky atlas, image databases and portal to the Virtual 
          Observatory. 
      (天体画像サービス、仮想天文台サービス)
    The CDS X-match service:
          for cross-matching large astronomical catalogues. 
      (天体カタログ相互の検索サービス)
    Portal:
      (とりあえずワンタッチで天体を検索)
      (使い方は、インタラクティブに説明してくれる)

※「千夜一夜物語」では、Aladdin と Sinbad/Sindbad



*SIMBAD サービスの紹介 → SIMBADスタートページ    → 多様な検索入口、ユーザーズガイド、参考文献、モバイル版など、サービス満点。      映像一覧もある。  ・"What is SIMBAD?" の機械翻訳  ・SIMBAD の使用例(Vega を検索してみる)
*VizieR サービスの紹介 → VizieR    → いろいろな天体カタログを示し、またその中の特定の天体を検索する。      その天体に関する、カタログ内の情報を示してくれる。
*Aladin サービスの紹介 → Aladin    → 天体画像の検索・表示      ダウンロードで使用するもの、ブラウザで利用する軽量のもの(Aldin Lite)、パイソン       プログラム、などがある。      画像の中の天体の、SIMBAD やいろいろなカタログ、VizieR データへのリンク、       などを示してくれる。      Aladin Lite を使ってみる(M82 を入れてみる)
*X-match サービスの紹介 → CDS X-Match    → 2つのカタログの、クロスマッチ      GSC と HSC で試してみる。
*Portal サービスの紹介 → CDS portal    → 特定の天体についての、あらゆる情報を示してくれる。
参考資料 (中嶋記) *ストラスブール天文台ホームページストラスブール天文台、wiki ページデータセンター (CDS) ホームページSIMBAD サービスVizieR サービスAladin サービスCDS ポータルページ