2025年10月18日 第715回 月例天文講座    

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でみる  宇宙初期の銀河とブラックホール

 東京大学宇宙線研究所 播金 優一


講演要旨: (10月7日 改定)
 2021年12月に打ち上げられ、2022年夏から本格運用を開始したジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、わずか数年のうちに観測天文学を根本から変えてしまいました。打ち上げからわずか2~3年で3,000本以上の論文が発表され、国際会議でその成果が熱く議論されるほど、世界中の天文学者たちを魅了しています。JWSTが特に革命を起こしたのは、宇宙誕生直後の最初の星や銀河を探る、「宇宙の夜明け」の研究です。従来の望遠鏡では赤外線観測の感度が足りず、また宇宙膨張により赤方偏移した光を捉えることが困難でした。しかし、直径6.5 mという巨大鏡と高感度の赤外観測技術により、JWSTはスピッツァー望遠鏡の10倍以上の感度を実現し、極めて暗く遠い天体も観測可能となりました。
 JWSTによる観測の結果、134~135億光年彼方の銀河が多数発見され、従来の理論予測を上回る数の銀河が初期宇宙に存在していたことが明らかになりました。また、120〜130億年前の宇宙で予測を大きく超える数の巨大ブラックホールが検出され、非常に早い時代からのブラックホール形成・成長の可能性が示唆されています。これらの発見は、銀河形成・成長、ブラックホール進化、星形成モデルなど、宇宙初期の物理過程に関する我々の理解を根底から問い直すものです。講演では、こうしたJWSTによる最新の成果と、それが我々の宇宙観にもたらすインパクトについて、わかりやすくご紹介します。



参考資料 (中嶋記)
*タイトルの右の図は Wikipedia のページ より。