2025年5月17日 第710回 月例天文講座  

観測ロケット実験 FOXSI、5分間の挑戦: 活動する太陽が放つX線光子を捉える

  国立天文台・太陽観測科学プロジェクト 助教
            成影 典之 



講演要旨: (5月7日 改定)
 最も身近な恒星である太陽で起きている様々な高エネルギー現象、その代表格は太陽フレアですが、これらは宇宙の活動の縮図と言っても過言ではなく、太陽を理解することは宇宙の理解にも繋がります。加えて近年では、太陽活動が地球・社会環境に及ぼす影響について調査すること(宇宙天気研究)の重要性が増しており、実用面での研究価値も高まっています。そこで我々は、NASAの観測ロケットを使って、最先端の太陽X線観測を実施する実験を行っています。このロケット実験はFOXSIといい、日米共同プロジェクトとしてこれまで4度の打ち上げを行いました。1回の観測時間は弾道飛行中の約5分間と短いですが、その都度、世界初の観測を成功させてきました。直近の打ち上げは2024年の春で、世界初の観測手法で太陽フレアを観測しました。本講演では、太陽の謎について解説し、その解決に挑むための観測装置開発の最前線と、FOXSIで得られた世界初の観測成果を紹介します。

講演者自己紹介:
 太陽(特に太陽フレア)のX線観測を中心に、科学データ解析、観測装置開発、飛翔体実験 などを通して、高エネルギープラズマ物理学(プラズマの加熱・加速、磁気再結合など)に 関する研究を行っています。2024年4月には、日米共同の観測ロケット実験FOXSI-4の打ち上げ を行い、太陽フレアに対する世界初のX線集光撮像分光観測を成功させました。 今後は、観測ロケット実験FOXSI-5や、超小型衛星を用いた太陽フレアの観測を計画しています。

    
    FOXSI3ロケット    7本のX線斜入射ミラー      磁力線の再結合による 
        (© NASA, FOXSI-3 team)            太陽フレアの説明図 


参考資料 (中嶋記)
*タイトルの右の図は 「太陽X線研究グループ」のページ より。
*上左図および上中図は観測ロケット実験 FOXSI3 のページより。
*上右図は国立天文台、成影先生のページより。
(いずれもクリックで拡大します)