2025年9月20日 第714回 月例天文講座
小さな天体が起こす大事件
- 新星,超新星,γ線バースト-
東京大学理学系研究科
ビッグバン宇宙国際研究センター
茂山 俊和
講演要旨:
(8月25日 改定)
星は稀に急激に明るくなることがあります。この講演では,新星,超新星,ガンマ線バーストと呼ばれる,星が急激に明るくなる現象を取り上げて,これらの現象がどのように認識され,理解されてきたのかを観測と理論の両面から解説します。これらの現象のほとんどは遥か遠くの場所で起き,私たちとは何の関係もない現象に見えます。しかし,これらの現象を理解することで過去に起きた類似の現象が私たちの存在とも密接に関係していることがわかってきました。私たちの体の元になっている元素,あるいは地球のもとになっている元素が,長い宇宙の歴史の中で起きたこれらの現象によって供給されてきたと考えられるのです。
一方で,明るい現象は遠くまで広がり膨張を続ける宇宙を調べるための道具としても使うことができます。ある種の超新星は本来の明るさが分かっているので,その見かけの明るさを測れば距離が測定できます。見かけの明るさは距離の二乗に反比例するからです。そして,超新星あるいはその母銀河が私たちから遠ざかっている速さの測定を多くの色々な距離に起こる超新星に関して行えば,宇宙の膨張則を観測から導くことができます。宇宙の膨張則は宇宙にどのようなものが含まれているのかによって決まっているので,このような観測結果から宇宙の構成要素を求めることもでき,その結論が私たちに示した課題についても解説します。
参考資料 (中嶋記)
*タイトルの右の図は
東京大学宇宙線研究所(ICRR)のページ より。
*元の図の caption は:
図1:ガンマ線バーストの想像図
中心のエンジンであるブラックホールから超高速の粒子流「ジェット」が吹き出ている様子。(Credit:東京大学宇宙線研究所/若林菜穂)