2025年4月12日 第709回 月例天文講座  

第25太陽活動周期極大期はもう終わりか?

  国立天文台名誉教授   渡邊 鉄哉 


 昨年4月、第697回講座で『太陽活動「極大期」到来 早まる?』というタイトルで第25活動周期の極大期に関するお話しをしました。するとその途端、5月上旬の2週間で、Xクラスフレアが、計19発も発生し、5月10~11日 (UT) には、日本を含む世界各地でオーロラが観測されました。これに刺激をされたのか、その後、8月の黒点相対数は、22年8ヶ月ぶりに200を超え、216 (予報では107.8) にまで達しました。

 また、10月上旬にも、Xクラスフレアが頻発し、特に10月9日の大規模フレア(X1.8) に伴って、地球方向へのコロナガスの放出(CME)が観測され、10月10日16時10分 (UT)ごろに地球周辺に到来した影響で、5月と同様、地球磁気圏で大規模な磁気嵐が観測されました。これにより、NASA (米・航空宇宙局) とNOAA (米・海洋大気局) は、「太陽は極大期に入っている!」と初めて記者発表し、「GPSや一部の無線通信、それに送電設備などに不具合が出るおそれがある」と注意喚起するとともに、「(極大期は) 今後一年は継続する」と推定しました。

      
  撮影:渡邊 翔太 2024年5月10日22時54分 (PST) 於:Washington州Seattle市郊外

 今回の講座では、ガリレオが初めて望遠鏡で太陽を観て以来、400年以上にわたり継続されている黒点の観測から明らかになってきた太陽(磁気)活動を復習しながら、今極大期の今後の推移について考察したいと思います: 極大期には、黒点が数多く太陽面の赤道付近に出現することはよく知られていますが、これとほぼ同時期に、南北両極域では、太陽磁場の極性が反転する現象が観測されています。この極大期における極域磁場の振る舞いは、黒点に付随する強い磁場の振る舞いと合わせて、太陽のダイナモ機構を理解する上で重要であると考えられており、最新モデル(磁束輸送ダイナモ)では、(依然、精度は不確かですが) 今後や次周期の活動度を推定するのに使われています。



参考資料 (中嶋記)
*右上図は NASA,SDOのページ より。