2025年7月19日 第712回 月例天文講座
すばる望遠鏡26周年の歩みと
誰でも楽しめるデジタルコンテンツ
国立天文台ハワイ観測所 広報普及専門員
臼田-佐藤 功美子
講演要旨:
(7月5日 改定)
標高約4200メートルのハワイ島マウナケア山頂域は、大気が安定し晴天率が高く、人工光の影響もほとんどない、世界有数の天文観測地です。その地で1999年1月、日本の国立天文台が運用する口径8.2メートルの光学赤外線望遠鏡「すばる望遠鏡」が初観測(ファーストライト)を迎えました。その後、遠方の銀河を発見したり、惑星が誕生している現場や太陽系外惑星を直接写真に収めたり、太陽系外縁部の小天体を発見したり、数々の観測成果を生み出してきました。
口径の大きな望遠鏡ほど、一度に見られる空の領域(視野)は狭くなりますが、すばる望遠鏡はファーストライト当時から、望遠鏡の一番上にある「主焦点」に観測装置を搭載することで広視野を実現しています。2013年からは、満月9個分の視野を誇る、超広視野主焦点カメラ HSC(Hyper Suprime-Cam)が観測を始め、2014年から約7年かけて、約 330 夜を使って、HSC で空の広い領域を深く観測する、すばる望遠鏡史上最大の戦略枠観測プログラム「HSC-SSP(Hyper Suprime-Cam Subaru Strategic Program)」が進められました。このHSC-SSPのビッグデータは段階的に世界中に公開され、どなたでもhscMapサイトにて、広大な宇宙画像の中を散策できます。この公開データを使って、一般市民が天文学研究に参加する「市民天文学」プロジェクトであるGALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)やCOIAS(コイアス)が進んでいます。
2025年初めには、主焦点の広視野を生かし、約2400天体の「虹」(スペクトル)を同時に観測できる超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph)が本格稼働を始めました。このように、すばる望遠鏡は機能を大幅に強化し、より広く、より深く、より詳細に宇宙を探求しています。
本講演では、すばる望遠鏡26年の歩みと今後を、2025年3月に出版したすばる望遠鏡25周年記念画像集「すばる望遠鏡 宇宙の神秘を探る」に掲載された画像を交えながらご紹介いたします。あわせて、いつでも誰でもどこからでも楽しめる、すばる望遠鏡のオンラインコンテンツについてもご紹介いたします。
関連リンク:
すばる望遠鏡
hscMap
GALAXY CRUISE
COIAS
すばる望遠鏡 25 周年記念画像集について
参考資料 (中嶋記)
*タイトルの右の図は
すばる望遠鏡のページ より。(クレジット:Sebastian Egner/国立天文台)