心で宇宙を観る

             国立天文台名誉教授 石黒正人

[解題]
 チリの5000m高地では、人類最大の電波望遠鏡ALMAの建設が
進んでいる。ALMAはスペイン語で「心」を意味する。本講演では
ALMA計画の狙い、建設の状況、最新の成果などについて紹介する
とともに、人間の自然の認識のしかたなど身近な話題にも触れる。 


[講演要旨]
地球には、宇宙からさまざまな波長の電磁波が届いているが、その
中で人間の眼見える可視光線は全電磁波スペクトルの中で極めて
狭い範囲に限られている。
ガリレオが小さな望遠鏡を使って宇宙を観測し始めてからまだ400年
ちょっとであるが、人類はこの100年程度の短期間に、かってない
勢いで電波やX線などの波長帯での天文学を開拓し、「見えない宇宙」
についての認識を深めてきた。
本講演では、見えない波長の電磁波を使った天文学の例として電波
天文学を取り上げ、その歴史、何が観測されるかなどについて概略
説明をする。さらに、人類の電波望遠鏡建設の歴史の中で、もっとも
巨大な電波望遠鏡ALMA(アルマ)を取り上げる。
10年ほど前から、南米チリ5000m高地で、口径12mアンテナ50台と口径
7mアンテナ12台を組み合わせたアルマ望遠鏡の建設が進められてきた。
現在、その約半数が完成し、昨年9月には16台の12mアンテナを使用した
初期の共同利用観測がスタートした。
ALMAはスペイン語で「心」を意味する。本講演ではALMA計画の狙い、
建設の状況、最新の成果などについて紹介するとともに、人間の自然の
認識のしかたなど身近な話題にも触れる。