超小型衛星による新しい宇宙開発への挑戦
東京大学 中須賀真一先生
(2012年11月17日,月例講演会,中嶋メモ)
*自己紹介
・1961年生まれ(ガガーリンが宇宙へ行った年)
・1988年工学系博士課程卒業
・1990年東大へ移った後,スタンフォード大で小型衛星製作を見る
> 日本でこれをやらねば,と思った.
・現在,航空宇宙工学の研究で教授 東大工学系研究科組織
> 航空宇宙工学は総合的な研究,システム統合技術である.
4人の宇宙飛行士が本学科出身.
*ロケットと衛星の基礎知識
・ロケットが衛星を打ち上げる(荷物を運ぶトラックのようなもの)
・衛星の活動エネルギーは? > 太陽エネルギー
・衛星の仕事 > リモートセンシング
・日本のロケット,H2A はたいへん成功している
・人工衛星の飛ぶ原理
> 遠心力と地球引力で釣り合ってぐるぐる回る,ハンマー投げ
のようなもの
> 水平方向にものを投げると,だんだん遠方へ届き,ついに
秒速7.7kmで投げると,地表に落下せず,地球を一回りして
帰ってくる.これが人工衛星. 原理図
*いろいろな衛星
・ハッブル宇宙望遠鏡(11ton)
・「はやぶさ」(500kg)
・気象衛星「ひまわり」(700kg)
・「ひまわり6号」(3ton)
・「かぐや」(3ton)
> 小さい衛星を2機放出し,3機の衛星で月重力を精密に測定
・年度と衛星の重さのグラフ 図
> 衛星は大型化の一途である
> 何百億という金額になって,なかなか開発が進まない
> 世の中は,スマホなどのように小型化が進んでいる 図
> 小型の衛星が必要 図
> 発想の転換が必要
> 小さいものを数多く打ち上げて大きいものの作業を分担
> 50kg以下であれば3億円以下でできる
*衛星革命
・研究室で開発しているのは,"CubeSat" 図
> 1kg,開発2年,300万円, 2003 & 2005 打ち上げ
> 民生品(秋葉原で買った部品)で8年以上稼働
> システムを強くして,長寿命に.
> 利用の仕方を考えて行かねばならない
・まず「缶sat」 "CanSat"
> ジュースの空き缶で,学習実習用衛星を作成 図
> アメリカのアマチュアロケットで高度4kmに打ち上げ, 図 図 図 図
パラシュートで落下中に通信 図
> 衛星が放出された後,電波が無事に受信できるかどうか
でハラハラドキドキする.これを体験した人は皆,衛星
開発のとりこに.
> 今年14大学が参加,高校生も 図
> これまでに開発された各大学のCANSAT 図
> 衛星は,手を離れたら修理ができない「非修理系」
> 学生にとっては失敗することも大事 図
(小さいプロジェクトで,10万円くらい)
*宇宙にゆくプロジェクト "CubeSat"
+XI-IV(サイフォー),XI-V(サイファイブ) 図 図
・東大と東工大で開発.
・概要:> 表参照 図 図
ナイロン線の使用(火薬の爆発は使用しない,またナイロンは
太陽の紫外線で自然に切れる)
アマチュア無線帯の電波を使用
リチウム電池を使用
・・・・
・開発で留意すべき衛星の環境: 図
真空,放射線,熱,打ち上げの振動,長距離通信
> 「冗長系」が重要(システムで強くする)
・打ち上げ: 図
Eurockot の Rockot を使用
2003/6/30 XI-IV
7/1 4:36 菅平局で受信 first voice
7/1 菅平の後東大でも受信 図 図
・移送は「機内持ち込み」で可能なところがすばらしい. 図
・データ配信サービスを公開中 図
> さいめーるステーション
+リモセン衛星 "PRISM" 「ひとみ」(3号機) 図
・長焦点カメラを蛇腹で作成 図
・8kg,地上分解能30m程度の精度がある 図
+ナノジャスミン(4号機) 図
・開発5年
・高い精度で姿勢を知ることができる 図
・(姿勢を安定して)長時間露出撮影を可能にする
・温度変化管理に特徴 図
・50cm 33kg 図
・ウクライナのロケットを用い,ブラジルで打ち上げ(もうすぐ)図
*今後の計画
・内閣府,最先端研究開発支援プログラム (2010-2013)を獲得 図
・通信系も姿勢制御系も総合的に開発
・開発プロセスの革新が必要
・4機の計画 図
1) 4バンドリモセン
2) 海外の宇宙科学ミッションの共同開発
3) 2機のコンステレーションによる地球観測
4) 同
*やりたいこと
・宇宙利用の「しきい」を下げる! 図
> 宇宙利用ビジネスの根本的なアイデア不足
> 宇宙利用を考える人の数を100倍にしたい.
*私の原点 図
・アポロの月面着陸の実況テレビをみてとりこになった
・こどもに「はまる」ものを見つけてあげたい 図
・若い人に「はやぶさ」がそのようなきっかけになってほしい.
*質問
・どこまで小型化できるか?
> 機能は基板1枚でよいが,通信,電源が大きく,最低5cmか.
・宇宙のゴミにならないか?
> 25年で落とさなければならない.
大きな膜を広げる,ごみ回収衛星を開発,などが考えられる.
・太陽電池が衛星側面のもののみのようだが,大きい物はいらないか?
> 0.8W なので小さいもので可.
・形もいろいろな形が考えられるか,重さはどこまで可能か?
> 形はどんなものでも良いが,中にたくさん入るもの.
軽さは素材を工夫して実現.
以上