6月21日(土)月例講座   

        暦について

                          国立科学博物館  西城惠一 先生
[講演要旨]

 暦とは、種々の時間周期を組み合わせて作った、年代や日付のシステムである。この
時間周期には自然の周期(天文周期)と人工の周期がある。自然周期としては日・月・年
があり、それぞれ地球の自転・月の満ち欠け(朔望月=29.5306…日)・地球の公転
(太陽年=365.2422…日)を示すが、これらは整数倍ではなく必ず端数がでる関係である。
自然周期のうち、日・年は人間の生活に大きく影響を与える。人工周期には、週・旬・
干支・世紀・千年紀などがある。そして、通常の生活では非常に大きな数になることは
避けることもふまえ、日・月・年の端数処理によりいろいろな暦システムが作られてきた。
ここでは、日本の暦の移り変わりを中心にお話しする。

 日本では古代から江戸時代まで、中国伝来の太陰太陽暦が使用された。初めて日本独自
の暦を作ったのは、江戸幕府初代天文方となった渋川春海(1639〜1715)である。春海は
天体観測に基づき、「貞享暦」(1685から施行)を作り上げた。近年、小説や映画の主人
公として取り上げられ、話題になった春海について紹介する。春海以後幕末まで、何回か
の改暦があり、次第に西洋天文学が日本に流入してくるが、日本の天文学は暦を作成する
ための天文暦学にとどまる。 

 明治維新により、日本の暦も大きく変わり、明治6年から太陽暦である「グレゴリオ暦」
が採用され、現代に至っている。グレゴリオ暦のルーツは古代ローマ暦で、これは太陰太
陽暦であった。それが、ユリウス・カエサルにより古代エジプトの太陽暦を参考に、太陽
暦としての「ユリウス暦」(BC46)が作られた。これを改めたのがグレゴリオ暦(AD1682)
である。この歴史についてもお話し、「なぜ2月は28日で、うるう年は29日がある?」か
にお答えする。

 また「旧暦」やその他の暦法についても、少し触れてみたい。

 なお、講演のはじめに、当駿台天文講座の生みの親でもあり、昨年亡くなられた村山定男
先生のことについて、科博・天文でご一緒させていただいた目から少しお話ししたい。