第50期 駿台天文講座 第597回講演 講演要旨
JAXA 有人宇宙技術部門 HTV技術センター 主任開発員 葛西 徹 先生
「宇宙宅急便 こうのとり」の目指したもの
1 国際宇宙ステーション(ISS)計画の概要
1)ISS計画
アメリカ、カナダ、欧州諸国(欧州宇宙機関(ESA))、日本、ロシアなど計15ヶ国
が参加する世界最大級の国際協力プロジェクトである。
2)施設の概要
ISSは高度約400kmの地球周回軌道に建設された、多目的の有人宇宙施設である。
3)計画の目的
研究開発プラットフォームとして利用される。さらに国際宇宙探査における有人活動
を推進するプラットフォームとしての役割も担っている。
4)ISS計画の推移
1984年に米レーガン大統領が提唱し、1985年に日、欧、加が参加表明した。冷戦
終了後の1993年にロシアが参加することとなり、設計を大きく変更した。1998年に
採用のモジュールを打ち上げた。
2 宇宙ステーション補給機(HTV:こうのとり)
1)こうのとりが果たす使命
国際宇宙ステーション計画の分担義務を履行しつつ、定常的な打上げによるロケット
技術を成熟させ、今後の軌道上活動に必要不可欠な技術を蓄積することが
「こうのとり」の使命である。
2)こうのとりの概要(ビデオ上映有り)
約1年に1機のペースでISSに物資を補給するための宇宙船である。約6トンの荷
物を搭載可能であり、補給完了後は廃棄物資を搭載し、最後は南太平洋上空の大気
圏に廃棄される。
3)最新のミッション結果
2015年8月にこうのとり5号機を打ち上げ、無事に補給ミッションを完了した。そ
の概要について解説する。
4)ライバル宇宙機との比較
米国、欧州、ロシアも無人補給船を保有している。こうのとりとの比較によりそれ
ぞれの宇宙機に独特の特徴があることが分かる。
5)こうのとりが輸送する荷物
実験装置、システム交換品、食料、水等を輸送する。
6)こうのとりを作り上げるために必要となった技術
こうのとりは日本が初めて作った宇宙輸送船であり、人工衛星や惑星探索を作る
場合とは違う技術的な難しさがあった。こうのとりプロジェクトが立ち上がった
1990年代終わりごろに日本が保有していなかった多くの技術を獲得することができ
たが、開発は困難を極めた。いくつかの具体例について紹介する。
(1)ランデブ技術
(2)キャプチャ&バーシング技術
(3)ISS規格で輸送船を設計する難しさ
①有人安全要求というもの
②決められた日時に荷物を届ける難しさ
3 将来に向けて
1)こうのとりアップグレード計画
こうのとりは9号機まで打ち上げを予定しており、少しずつ設計を見直している。
このアップグレード計画について紹介する。
2)2020年代のISS計画
ISSの運用期間は当初の終了予定である2016年を超えて延長され、米国は2024年
までの運用継続を宣言している。この運用延長をめぐる動きについて紹介する。
関連資料(以下,中嶋記入)
*JAXA, ISS ホームページ
*JAXA, fan!fan!, こうのとり5号機のページ
*NASA, ISS ホームページ
*三菱重工のページ