右のパワーポイント画像をクリックすると拡大します. 一部の「引用画像」は,解像度を落としてあります. ◎はじめに 私の専門は生命科学なので,まず地球の生命のお話をして, それから宇宙のテーマへ進みます. ◎生命史と化石 *放射性元素による化石の年代測定 14C(炭素14)による年代測定: 宇宙から絶えず降り注ぐ宇宙線により,窒素が核変化を 起こして14C になる.宇宙線は一定なので,14C と14C の割合は一定になる.これらの C が植物などに取り込 まれると,そこで14C と14C の割合が固定される. その後14C は一定の割合で減少し,約5700年で半分になるので, 14C の量を測定すると年代がわかる. ※この5700年を「半減期」という. *14C の他にも,右図のように,いろいろな半減期の 放射性元素があり,いろいろな年代が測定できる. *微化石の年代 何億年も前は単細胞の生物しかいなかったので,「微化石」 で年代を調べる. ガンフリント層は,アメリカ北部,スペリオル湖のカナダ側 にある. *最古の化石? 単細胞の集合(シアノバクテリア) *化学化石 DNA 解析は1万年前まで 古いものは炭化水素(油)を分析(オイルシェール) もっと古ければ 13C (自然界の13C の割合はほぼ 1% であるが,生物では 13C が少ない.) グリーンランド,イスアは13Cが生物寄り → 39億年前の生物の存在を示すか? *地球生命史 生命以前は5億年しかない 生物は保守が本質,高等生物への進化はほんとにゆっくり 90%は,目に見えない単細胞生物時代 ◎進化時計 遺伝子の変化を追跡して,進化の年代を測る. タンパク質はアミノ酸が結合したもの.その配列によって 性質が決まる. 最初のアミノ酸配列の決定は,1955年,F.Sanger による もので,「インスリン」のアミノ酸配列を決定した. (右図拡大) インスリンなどの体内物質のアミノ酸配列は,動物によって 少しづつ異なる. → アミノ酸配列の違いを分類すれば,進化の流れがわかる. → 分子進化学 (右図拡大) 分子進化学は,木村資生先生の業績. 分子系統樹 Molecular tree により,今の生物の遺伝子 を調べれば,化石がなくても進化がわかる. ◎恐竜の絶滅 生物の進化は,何度も大絶滅を経験している. いつ全滅して振出に戻ってもおかしくはない状況だった. 人類までの進化は,苦難の連続. 恐竜の大絶滅の原因について,アルバレス親子の仮説 「大隕石の衝突」が,現在では認められている. ユカタン半島に,巨大隕石孔が見つかった. 高さ300mという大津波が襲った. *生命の歴史は大絶滅が作った (右図拡大) 大量絶滅の歴史(6回の大きな絶滅があった) (2億3千万年前は種の90%が絶滅) ※大絶滅の原因はわかっていないものが多い. 「スーパープルーム説」 スーパープルームというマントル対流が発生し,熱エ ネルギーが上昇,火山が沢山噴火して気候が変化した. 「超新星爆発の放射線説」 太陽系の近くで超新星爆発が起こり,大量の放射線が 地球に降り注いだ. ※いずれにしろ宇宙的原因が考えられる. 「全球凍結 Snowball Earth」 22億年ころに1回,7.5〜5.8億年の間に2回 (右図拡大) 陸地は1000m の氷におおわれた ※「水」は(他の物質と異なって)固化すると比重が軽くなり, 液体部分の上に浮かぶ.それゆえ,海底部分では液体の中で 生物が生き延びることができた. 全球凍結後に進化が爆発している. (右図拡大) *生物の分類 原核細胞の生物(真正細菌,古細菌) 真核細胞の生物(高等生物) 原核細胞の構造(大腸菌など) 遺伝子は細胞の中に漂っており,核のようなものはない. 真核細胞の構造(高等生物) 遺伝子は「核」の中に(金庫のように)守られており, 他に「ミトコンドリア」などの小器官があって,分業が 行われている. *進化の大爆発 5億年前に多くの多細胞生物が発生し,「進化の大爆発」 があった. Charles Dolittle Walcott がカナダ,ブリティッシュコ ロンビアで多くの化石を発見し,これがわかった. 「アノマロカリス」など,奇妙な生物も. ◎ETは いるか? *Drake の式の評価 天文学のパラメータは大体決まる 生命学のパラメータは決まらない (右図拡大) (右図拡大) *宇宙生命は存在するか? (右図拡大) 生命発生は宇宙に普遍的に成立 材料は隕石や彗星に見つかる 電波天文の星間分子でも材料がわかる (右図拡大) *生命の特殊性 遺伝子を別の細胞に入れて生物ができる. 「くまむし」は乾燥しても水に入れたら生き返る. 宇宙に出しても生き返る しかし物質と生命の境界はまだよくわかっていない ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ *ドレークの式と知的文明の存在の関係 右図のように,知的文明の生存期間 (L) が大きければ それだけ地球外知的文明の発見の確率 (N) も大きくなる. 私の推計では,N = 0.1xL 程度であり,人類の寿命が 10億年であれば 1億個の地球外文明が存在することになる. (逆に,地球外文明がまだ一つも見つかっていないことから, N<1 とすると,L<10 となり,人類はもう滅びていること になる! [中嶋追加]) *ヒトへの進化は苦難の連続 平和な環境では,何十億年たってもバクテリア以上に進化 しない. (右図拡大) ◎ETとの会話 悲観的な見方 (右図拡大) *フェルミ・パラドクス ETがいるなら宇宙全域に進出するはず (右図拡大) *異種生物の接触は危険 人獣共通感染症は,多くの場合重篤な病気 狂牛病 新型インフルエンザ (コロナウィルスはコウモリ?) ※人間に宇宙人の病気が移ったら大変.
質問 *ウィルスは生物か物か. > ポーリングは「生物は定義するより研究するものだ」と言った. 定義は? 見ればわかる(幼稚園でもわかる) 基礎生物学では「生物の要件を欠く」=「新陳代謝しない」 細菌学ではウィルスを細菌の一部門として研究している. *人工生命に名前を書き込むには? > 20種のアミノ酸にそれぞれ記号を決めているので,それを利用して 文章を書き込むことができる. 方法は発表されていない. *生き物の生きて行く力? 見ればわかる直観の正体は? > 人間は脳波で定義,これは法律で便宜的に決めたもの. 死んでも物質的にはほとんど変わらない. 微生物でも,培養できないものも多い, 生きているものと死んでいるもの,その中間のものなどが混ざっている. > 人間も生き返るかもしれない. *宇宙に生命がいる,という考え(前提)で研究してきたか? > はい. ただし存在は悲観的であり,どういう研究をすればよいかもわからない. 大変むずかしい問題であり,研究方法がわかっていれば(講演などには 来ないで)ひたすら研究している. 以上