第50期 駿台天文講座 第596回講演 講演要旨
愛媛大学宇宙進化研究センター長・教授 谷口 義明 先生
なぜ宇宙はブラックホールを造ったのか?
ブラックホール。日本語に訳すと“黒い穴”です。なぜ黒いかというと、電磁波や情報が一切出てこないからです。ブラックホールという言葉自体は1967年に米国の物理学者、ジョン・ホイーラーが提唱したものですが、ブラックホールの概念は18世紀に考えられていました。たとえば、星が質量を保持したまま小さくなっていくとします。すると、星の表面での重力がどんどん強くなり、光が出てこられなくなります。理論的には、そのような天体があってもおかしくないのです。このような推察はニュートン力学の範囲でも、十分可能です。しかし、ブラックホールの物理的性質がきちんと理解できるようになったのでは、20世紀に入ってからです。アルベルト・アインシュタインの重力理論である一般相対性理論の自然の帰結としてブラックホールが理解されるようになってきたのです。
では、ブラックホールは本当にあるのでしょうか? 答えはイエスです。現在では3種類のブラックホールの存在が確認されています。ブラックホールは質量によって分類されており、まず、最初は“星質量ブラックホール”です。質量は太陽の数倍から20倍程度。これらのブラックホールは大質量星が超新星爆発を起こした時、中心のコアが重力崩壊してできると考えられています。典型的な銀河の進化を考えると、一つの銀河に数億個の星質量ブラックホールがあると推定されています。次は、“中質量ブラックホール”ですが、超大質量ブラックホールを先に紹介しましょう。超大質量ブラックホールは銀河の中心核にあります。私たちの住む銀河系(天の川銀河)の中心にも超大質量ブラックホールがあります。その質量は太陽の約400万倍もあります。超大質量ブラックホールは珍しいものではなく、ほぼ全ての銀河の中心核にあると考えられています。宇宙にはざっと1000億個の銀河があるので、超大質量ブラックホールも1000億個はあることになります。質量は太陽の百万倍から百億倍にもなります。中質量ブラックホールは星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間的な質量を持つブラックホールということになります。
さて、ブラックホールに吸い込まれると、二度と外には出てこられません。近づかない限り、安全とはいえ、宇宙はどうしてたくさんのブラックホールを造ってきたのでしょうか? その答えは講演会でお話しすることにします。
関連資料(以下,中嶋記入)
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愛媛大学宇宙進化研究センター・宇宙大規模構造進化研究部門,ホームページ
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銀河と共に進化する超大質量ブラックホール(日本物理学会誌,2014年,谷口先生解説)
*谷口先生研究テーマ,
「宇宙進化サーベイ(COSMOS)プロジェクト」
「塵に覆われた銀河 (Dust Obscured Galaxy, DOG) の研究」
*谷口先生の一般向け天文解説書
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