2016年5月21日 第602回 月例天文講座
宇宙、千曲川に沿って
宇宙航空研究開発機構 名誉教授 平林 久
野辺山,45m電波望遠鏡
本講演では、長野県千曲川流域に生まれ育った講師が、千曲川から長野県周辺に沿ってながめた観測(電波領域から高エネルギー宇宙線、ニュートリノ、重力波にひろがる)をレビューする。歴史、文化面にも触れる。
1.野辺山宇宙電波観測所(1982-)
太陽電波観測所のこと(6年間勤務) 前史時代的な役割
大型宇宙電波望遠鏡 計画
宇宙電波懇談会によるボトムアップ体制 自由な気風
全国共同利用体制
45m電波望遠鏡
成功
ミリ波で使える高い鏡面精度 ホモロガス変形採用
広いスペクトル処理能力 海部さんのがんばり
失敗
アンテナ首周りの強度 補強
1.4-1.6 GHz帯/ 5 GHz帯 取り外し、
グレゴリアン焦点 カセグレン焦点に変更
10m 5素子干渉計
FX相関器の実現 近田義広さん
FX方式が干渉計設計(分光計も)の世界標準となる
ここで特筆すべき発見、、
* NGC4258 特異水メーザー線 発見 (中井他)
メーザー線円盤と超巨大ブラックホール(三好他,1995)
2.臼田宇宙空間観測所(1984- )
宇宙研が新ロケットと探査機、深宇宙通信で、太陽系に軸足を伸ばした
(M3S-IIロケット 彗星探査機:さきがけ、すいせい)
以後、深宇宙通信のセンターとなる (宇宙研には 超遠距離通信工学部門)
高周波化に伴う新アンテナ(8, 32 GHz帯) 50m級
ここで特筆すべきこと、、
* TDRSS-OVLBI実験(1986-1988)
* 「はるか」、VSOP計画での役割
「はるか」スペースVLBI追跡局 基本技術の確立(1997)
3.明野宇宙線観測所
野辺山を南に越えて、、 山梨県 明野村(茅が岳の西麓)
AGASAがとらえた超高エネルギー宇宙線源のミステリー
TA(Telescope Array)への展開
4.神岡宇宙線観測所
カミオカンデ マゼラン星雲での超新星 SN1987A
11発のニュートリノ 小柴先生
スーパーカミオカンデ
光電管爆発事故を乗り越えて
ニュートリノ振動 質量 梶田さん
ニュートリノ飛行実験など
KAGURAと重力波天文学時代の到来(2016)
関連年表(前世紀末)
1980
81
82 野辺山宇宙電波観測所 開所
83 カミオカンデ稼動
84 臼田宇宙空間観測所 開所
85 さきがけ、 すいせい 打ち上げ
86 ハレー彗星 TDRSスペースVLBI実験(18cm)
87 超新星1987A
88 野辺山太陽電波 TDRSスペースVLBI実験(2cm) Hx 宇宙研へ
89(平成元年) Muses-B衛星開発開始
1990 M-Vロケット開発開始
91 明野AGASA稼動
92
93
94
95
96 スーパーカミオカンデ稼動
97 はるか打ち上げ/ VSOP開始
98
99
2000
5.一遍上人のフライバイ
浄土宗から時宗の開祖となった一遍上人
踊り念仏を佐久の小田切の武士の館で始める(1279)
「捨て切って」、「全国を遊行」する (亡くなるまで16年間)
「一遍上人絵伝」
無量光寺(相模原)
遊行寺 (藤沢)、時宗の本山となる
相模原市博物館(宇宙研の隣)にも無量光寺庭の銅像のレプリカ
死ぬまで遊行を続けた一遍の生は、宇宙を飛び続ける探査機のようでもあり、
停まることのない光子のようでもあった。
6.島崎藤村の転進と好奇心
島崎藤村(1872-1943/8/22) ・・・3週間後にHx生
小諸時代(明治32-明治38)
小諸義塾 6年間 Hx太陽電波観測所の6年間
「千曲川のスケッチ」
正月のトサツ場見学
秋の修学旅行
詩から散文への模索 小説の習作 野辺山舞台
佐久市平林部落に秘仏あり 平林観音(千手観音)という
天台宗 平林山 津金寺 千手院
ハレー彗星とSN1987Aが後押しをした。
参考資料 (中嶋作成)
国立天文台 野辺山
臼田宇宙空間観測所
明野宇宙線観測所
神岡宇宙線観測所
一遍上人 (Wikipedia) ーー>
相模原,無量光寺 ーー>
島崎藤村 (Wikipedia)
「千曲川のスケッチ」(青空文庫)
佐久市平林,天台宗 平林山 津金寺 千手院