2016年8月20日 第605回 月例天文講座 

宇宙に生きる

        JAXA 宇宙科学研究所 准教授 黒谷明美
講演要旨
1.宇宙環境
 人間を含めた地球の生物のさまざまな生命活動に関わる宇宙環境には、主には、地球とは異なる、重力環境(微小重量)、宇宙放射線、昼夜の長さなどがあり、これらの組み合わせがその効果の強さを変化させる可能性もある。
 人間や生物が、どのように宇宙環境の影響を受けるのか、宇宙環境のなかでも特に、重力環境と生物についてお話しする予定である。

2.体液シフト
 私たちの身体の中の体液も重さがあり、地球上では何もしなければ足の方にたまってしまうが、身体の隅々まで体液が行き渡るように、心臓や血管などが働いている。宇宙ステーションなどの微小重量環境では、地上と同じように心臓と血管などが働くと、体液が上半身にたまりやすくなり、顔がむくむ、いわゆる「Moon Face」になり、逆に下半身が細くなる。これが体液シフトである。

3.筋肉や骨の弱化
 地球上では、私たち人間が直立したり、姿勢を保ったりするのに、抗重力筋が働いている。微小重量状態では、このような抗重力筋の働く場は減り、それにともなって筋肉は萎縮し、筋肉を支えている骨ももろくなる。

4.宇宙酔い
 地球上では、私たちは視覚や平衡感覚などによって、自分の姿勢の制御を行っている。宇宙環境下では、内耳にある前庭器官が地上と同じようには働かず、視覚による情報と平衡感覚による情報が食い違いを起こす。この情報の混乱により、乗り物酔いのような症状が起こる「宇宙酔い」が起こる。宇宙酔いは、宇宙飛行士の2/3くらいがかかるとされている。

5.そのほか
 宇宙環境下では、生物の生殖はどうなるだろうか? メダカは婚姻行動ができるのか、イモリは産卵、その後の発生がうまくいくのか、ニワトリの卵はどうなのか、など、時間に余裕があれば、いろいろな宇宙実験の結果を紹介する。
 また、宇宙環境下での植物はどうなるのかについても、できれば紹介したい。


参考:サイエンスライター森山和道さんによる黒谷明美の紹介インタビュー http://www.moriyama.com/netscience/Kurotani_Akemi/Kurotani-1.html

主な著書/(出版社名)
 1. 星と生き物たちの宇宙―電波天文学/宇宙生物学の世界 (集英社新書)
    (平林久/黒谷明美 共著)
 2. 絵でわかる細胞の世界(講談社) 
 3. 絵でわかる生命のしくみ(講談社) 

*残念ながら、どれも絶版になっています。BookOffとかにあるかも。

その他
 毎日ではないですが、通常2駅分の電車通勤を「行き」だけ、徒歩にすることがあります。1時間強ありますが、境川という川沿いの道を歩くと、カワセミ、サギ、そのほかの鳥、カメ各種、散歩中の飼い犬各種などなどいろいろな生きものに出会え、観察ポイントがたくさんあります。気をつけないと、遅刻してしまうことがあります。