2018年4月21日 第625回 月例天文講座 

ノーベル賞と宇宙

     JAXA, 宇宙科学研究所 名誉教授 平林 久



 宇宙に関するノーベル物理学賞から見えてくる宇宙と物理について考える。
 始めに、1901年に始まったノーベル賞で、宇宙に関わる物理学賞として以下の10件があげられる。 物理学賞以外の受賞はなく、物理、天文分野以外の物理学賞は未だない。

 受賞年
1936 ヘス  宇宙線の発見
1967 ベーテ 核反応の理論、特に天体におけるエネルギー発生の発見
1974 ライル 開口合成法の発明
     ヒューイッシュ パルサーの発見
1978 ペンジアス、 ウィルソン  宇宙背景放射CMBの発見
1983 チャンドラセカール 天体の構造と進化の物理的過程の理論研究
     ファウラー 宇宙における元素形成にとって重要な核反応の研究
1993 ハルス、 テイラー 重力波のパルサーによる間接検出
2002 デイビス、小柴  宇宙ニュートリノ検出における先駆的貢献
     ジャコーニ 宇宙におけるX線源の発見
2006 マザー、 スムート    CMBのスペクトルと輝度のムラ
2011 パールムッター、シュミット、リース  宇宙の再加速膨張
2017 ソーン、バリッシュ、ワイス  宇宙における重力波の検出

このうち理論2件、観測8件である。また、これを観測手段で分けると、電波が大事な役割を占めてきている。

 受賞分野から、
I..宇宙そのもの(ビッグバン、加速膨張)、
II..核反応と極限的な星、
III..新しい観測手段による発見
が、主題テーマとして浮上し、物理的な重要テーマとみなされていることがわかる。講演では、このまとまりでレビューをおこなう。

 今後の懸案の研究テーマとしては、ブラックホールの検証、インフレーション理論の確証、ダークマターの解明、ダークエネルギーの解明、そして予期せぬ発見があるだろう。


[参考](中嶋記)
*右上カットは,2010年のノーベル賞授賞式.(Wikipediaのページより.クリックで拡大.)