2019年10月19日 第643回 月例天文講座 

京1000年の天文学街道

      京都大学 名誉教授 小山勝二先生

 京都は1000年以上の歴史をほこる都である。今日の日本の文化や風習などは1000年前の京都から始まったといっても過言ではない。
                            (理研,玉川氏の資料より引用.)

 これらの背景には陰陽道がある。ここでいう陰陽道とは平安時代に古代の中国からもたらされた自然哲学思想、陰陽五行説を起源とし、日本の土着の信仰や風習などが入って独自の発展をとげたものである。その歴史的遺産は現在も至るところで見られる。例えば平安時代から始まった祇園祭りはもとはといえば、陰陽道の牛頭大王に疫病退散を祈願する祭りであった。

 平安時代の陰陽道は安倍晴明によって始まったと言えよう。彼の子孫は多くの天体観測をして結果を朝廷に報告している。そのなかに超新星爆発(古くは「客星」と呼ばれた)があった。平安末期から鎌倉時代にかけて、有名な歌人藤原定家は日記「明月記」(国宝)を残した。その中に1000年ほど前に起こった超新星爆発(客星)の記録が3例ある。これは世界的にも特筆すべき天文資料として有名である。例えばグリーニッチ天文台(現在は天文博物館)の天文歴史年表にガリレオの望遠鏡発明(1609)に先がけ明月記のかに星雲の発見がリストされている。

 私は明月記の3客星の現在の姿をX線で観測した。その結果と意義を現代天文学の立場から紹介する。

 本講演は:
  1. X線天文学とは:X線でみた宇宙とは:超新星残骸
  2.安部晴明と陰陽道
  3.京都千年の歴史
にわけて話すが、互いに内容が混在するのはご容赦願いたい。



[参考](中嶋記)
*右上カットは,日本のX線天文衛星 ASCA が観測した超新星残骸.『明月記』に「一條院 寛弘三年四月二日 癸酉 夜以降 騎官中 有大客星 如螢惑」と記された,1006年のおおかみ座超新星の残骸.(理研,玉川氏の資料より引用.)
 (写真をクリックすると拡大します)

小山先生,ホームページ