2020年1月18日 第646回 月例天文講座 

暦の話題

 日本カレンダー暦文化振興協会 事務局長 小澤 潤先生


 天文学と深い関わりを持つカレンダーについて、基本的なことを解説する。カレンダー業界にとって大きな問題である2033旧暦閏月問題についても詳しく説明する。また、曜日、月の並びの理由や、旧暦にまつわる話、特定業界向け企業カレンダーや、2019年版、2020年版カレンダー製作についての話などをし、カレンダー、暦についてご興味を持っていただけたらと思う。

1 暦の知識について
1)二十四節気
 二十四節気は春分点を起点にして、地球の公転軌道を位置で二十四等分したものである。特に太陰太陽暦では重要な役割をしていた。

2)新暦と旧暦
 現代の日本では、1年を364.2425日とした太陽暦であるグレゴリオ暦が使用されている。一方の旧暦は、江戸時代末期の太陰太陽暦である天保暦となる。

3)六曜
 旧暦の月日によってのみ決定される。旧暦が使用されていた時期では当たり前すぎて、現在ほど注目はされていなかった。


2 暦のうんちく・なるほど
1)曜日の並びの由来 
古代に考えられていた星の並び順による。

2)月の並びの由来 
 古代ローマの暦から数度の改暦と、時の為政者の影響も受け変遷した。

3)旧暦のなるほど
 花の咲かない3月3日の桃の節句など、実は旧暦で時期をとらえると今の新暦とは異なり、整合性が得られる。 

4)2017年の問題
 2017年2月のカレンダーに六曜が2種類存在する過ちがあった。原因は新月を迎える時刻の計算ミスや解釈により、日にちがずれたことによる。


3 2033年旧暦閏月問題について
1)問題とは… 
 旧暦の月日が決めらないため、六曜や旧暦に関連した行事が影響を受ける。

2)新月の間隔、中気の間隔
 地球の公転は楕円軌道のため、時期によりその間隔は変動している。

3)旧暦のルール 
 問題回避のため中気を含まない場合や、中気同士の優先順位が設けられてはいる。

4)2033年の例
 閏月の配置が3通りできてしまい、中気の優先順位が不足しているため決定できない。

5)問題点の整理
   旧暦の月名が決定できない問題。原因は中気が余分、不足する頻度が高いため。

6)暦文協の見解 
 候補は複数あるが閏11月案を推奨。ただし置閏ルールは検討を継続する。


4 業界向けの話
1)特定業界に好まれるカレンダー
 企業向けカレンダーの中で用途が絞られているものや、六曜の記載のないカレンダーがあり、これを紹介する。

2)六曜の記載
 科学的根拠のない吉凶を表すとして、六曜の記載が問題となる事例がある。カレンダー業界では六曜を否定も肯定もしていない。ただ仕事の緩急に影響があるため、六曜が利用されている事例がある。


5 2019年版、2020年版カレンダーについて
1)2019年版
 皇位継承にともない休日の変更、改元があったが、カレンダー業界で統一ルールを定め、カレンダー利用者に混乱のないよう製造、販売をしていった。

2)2020年版
 東京オリンピックの影響で祝日の移動がある。早い時期での政府による正式発表があったため、カレンダーの製作上で大きな混乱はなかった。



[参考](中嶋記)
*右上カットは、江戸時代の大小暦(旧暦の大の月、小の月を示した浮世絵) クリナップのページより (図をクリックすると拡大します。)

*日本カレンダー暦文化振興協会 ホームページ